camellia57
2026-02-01 18:27:30
67473文字
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火アリSSメーカーまとめ

2024~2025年に書いたSSのまとめ。全年齢のみ。ごちゃまぜ
話は独立していてつながっていません。基本的にはページが後ろの方が古いです


「お前も入れよ」
 火村が私を手招きする。その手に握られているのは折り畳みの黒い『日傘』
 そろそろ試験期間も終わった頃かと火村の研究室に立ち寄った帰り、照りつける日差しに目を眇めているとカバンからそれを取り出して広げたので驚いた。
「君、そんなん持ってたっけ?」
「婆ちゃんが新しいのを娘さんにもらったとかで使わなくなったやつをくれたんだ」
「へぇ」
「へぇ、じゃないだろ。お前はこんな晴天の日に帽子もかぶらずに外をうろついて、熱中症になるつもりかよ。俺達が学生だった頃とは違うんだぞ? やたらとこっちの気温を知らせてくる割になんの対策もしていないのか?」
 なにがスイッチだったのか、急に小言がはじまってしまった。
「水分補給はしてるし。塩タブレットも常備してるで」
 完璧だろう? と胸を張る私を無視して
「いいから、こっちこいよ」
「えぇ……? こんな傘の布1枚でそんなに変わるんか? 雨傘となにが違うん?」
 いつまでもうだうだと傘に入るのを渋っていたら火村に腕を掴まれてぐいっと引き寄せられた。ちょ、ちょっと待たんかい!
「変わるだろ?」
 涼しく感じるほどではないし地面からの照り返りでもわっとしてはいるが確かにこれは。
……効果はあるようやな……
「頭のかたい有栖川先生に納得してもらえてよかったよ。お前にも必要なんじゃないか? インドアの割に散歩が趣味のようだし」
「まあ、一つくらいあってもええやろうけど種類がようけあって、おっさんにはなにを選んだらいいんかわからんわ」まさかレースがついているのを差すわけにもいくまい。
 一つの日傘に入って歩きながらそんなことを話しているうちに駐車場に着いた。相変わらずある意味では芸術的なベンツだ。蒸し風呂状態の車のドアを開けて車内の熱を逃がしていると火村がアウトドア用品店の袋を渡してきた。キャンプなどとは縁のない私でも知っている有名な店だ。質も値段も高くファンが多いその店の商品は度々話題になっている。
「やるよ」
 中を見ると軽くて薄い折りたたみの日傘。
「へ?」
「どれを選んでいいかわからないようだから」
「いや、そう言うたけどやな」
 これを私に受け取らせるために日傘に入れたのか? 随分と手間をかける男だ。
「二つあるんなら、一つの傘に入る必要なかったやんか」
 理由なんてわかっていてもついこんな言い方をしてしまう。
 夜の雨の中ではなく昼の太陽の下で並んだことが気恥ずかしいのだ。

 火村がにやけながら言う。
「恋仲ならおかしなことじゃないだろう?」
…………アホ」