camellia57
2026-02-01 18:27:30
67473文字
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火アリSSメーカーまとめ

2024~2025年に書いたSSのまとめ。全年齢のみ。ごちゃまぜ
話は独立していてつながっていません。基本的にはページが後ろの方が古いです


「夢みたいや……

 長年の片思いが実って火村とのお付き合いがはじまった。
 ……はずなのだが本当に夢だったのかもしれない。というのもどうやら火村に避けられてしまっているようなのだ。
 何の用がなくてもフィールドワークの帰りに寄るという連絡もなく――お呼びが掛からなくなったわけではないことははりきりボーイに確認済みだ――ホテル有栖川の予約は埋まらない。ならばこちらから出向こうかと予定を聞けば三回連続で断られてしまった。返事がくるだけまだマシだがどう考えてもこれは私と会いたくないのだろう。このまま何もアクションを起こさなければ恋人としての関係はうやむやになりかねない。
 それは……嫌だ。
 そちらが逃げるつもりならこちらは追いかけてやるとノーアポで研究室に押し掛けると露骨に嫌な顔をされてしまった。
「お前が避けるからやないか」
 昨今の流れで研究室内も『喫煙禁止』となり、煙草で逃げられなくなった火村は沈黙を選ぶ。
「たまたまとか言うなや。裏は取れてるんやぞ」
「ついに私立探偵に転身か」
「心配してもらわんでも小説でこの先も食っていくし副業もせん」
「そうか」
 また黙り込む。それだけではなく、部屋に入ってからまったく目が合わない。
……後悔してるってことか? 嬉しかったんは俺だけか?」
 時間が経って、冷静になって、やめたくなったのか?
「そうじゃない」
「せやったらなんでや。なんで会うてくれへんの」
「それは……
「なんで、俺の方見てくれへんの……
 視界がぼやけて瞬きひとつでぽたりと涙が溢れた。慌てて目を拭うけれど次から次に流れてきて止まらなくなってしまう。こんなつもりじゃなかったのに。情けなくて顔を上げられなくて、拭いきれない涙が床に落ちる。

「アリス」
 顔を上げると、火村が躊躇いがちに腕を伸ばしてそっと抱き締めてくれる。
「悪かった」
……なにがや。答え次第では許さへん」
「おっかねぇな。まあその……なんだ、あれから実感が湧いてきたらどんな顔すればいいかわかんなくなったんだよ」
「いつも通りにしてればいいんちゃうの?」
「それができなくて困ってるんだよ」
「なんで?」
「なんでって……、そりゃ……ニヤけそうになるからだろ」
 火村にとって言いにくいことを言わせているのはなんとなく伝わってくるのだが、火村がなにを悩んでいるのかがさっぱりわからない。
「にやけたらあかんの?」
「締まらないだろ」
 そんなことはないと思うが。
「お前、昔から俺の顔ばっかり褒めるじゃねぇか」
「はぁっ!? そ、そんなこと、ないわ!」
「酔うとしょっちゅう言ってたぞ。『考え事してるときの顔がええ』とか」
…………記憶にない」
 それとこれがなんの関係があると言うのだ。
「だから、まあ……浮かれてニヤけてる顔を見たら、思っていたのと違うってなるんじゃないかって。そう考え出したらアリスにどんな顔して会えばいいかわからなくなった」
……君ってほんまに、頭がええアホやな」
 そんなこと、思うわけないじゃないか。
「もっとだらしない顔見せてや。俺だけに」
「本当にずっと緩んでていいんだな?」
「ええやん。そういう顔も好きになると思うで?」
「顔以外も好きになってくれよ」
「愚問やな」
 そんなの、聞くまでもなく決まっている。