Privatter+
Font
Serif
Sans Serif
Color
Light
Dark
auto
Font size
Large
Medium
Small
Language
Japanese
English
Sign in with Google
Sign in with ID and password
Account ID
Password
Sign in
Forgot password?
Create account
零ミリ
2026-04-26 18:26:40
39322文字
Public
Clear cache
輝石と筆跡2026毎日ワンライ
がんばります
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
13
14
15
16
17
18
19
20
21
22
23
24
25
26
27
28
29
30
31
32
思い出すのはあの声・もう一度呼ばれたい
ぐしゃりと机の上に散らばった資料を掴み、乱雑に叩きつける。こんなことをしても何もならないと分かっているけれど。
「无諦、无諦
……
!」
无諦が消えて数年。正気に戻る度に无諦を思い出し、この世界では会えないことに行きどころのない思いに悶え苦しむ。
思い出すのはかつて彼が優しく呼んだ僕の名前。あれだけ毎日のように呼ばれていたのに、どのような声だったか薄らとしか思い出せない。
初めて无諦が僕を下の名前で呼んだあの日。
共に至高天の先を目指そうと誓い合ったあの日。
恋人として初めて結ばれたあの日。
无諦はずっと僕のことを愛おしく呼んでくれた。甘い優しい記憶は確かにあるのに、音声がかすれてはっきりと思い出せない。
「いやだいやだいやだ! 无諦を忘れたくない!」
このまま彼の声を忘れてしまうのだろうか。そんなことは絶対に嫌だ。どうすればいい?
「无諦
……
また会いたいよ
……
」
古い写真に写る若い无諦の姿をなぞる。在りし日に四人で撮った写真だ。この日々はもう戻ってこない。戻らないのならば、せめて忘れたくないのに。
「无諦、君の呼ぶ僕の名前をもう一度聞かせてくれ。そこにいるんだろう?」
虚空に応えはない。でも分かるよ。君はきっとこの声が聞こえる。だから、僕も君の名前を呼ぼう。
「无諦!」
空中に浮かび上がる文字を見て一人呟く。
「藍桐、君は死んだのだな」
あの訪問者から読み取った因子で藍桐の死は知ったが、こうして最後の手紙を見ると改めて実感する。
藍桐が死んだということは、仮にもし私がこの先再び肉体を得ることがあったとしても、藍桐とは会えないということだ。
悲しみを感じる。私の中に色が徐々に取り戻されている。
もう、彼が私の名前を呼ぶことはないし、彼に触れることもできない。ああ、彼が呼ぶ私の名前はなんて甘美な響きだっただろうか。
「藍桐」
どこでもない空間にただの無意味な音が響く。名前を呼んでも聞く人はいないというのに。受け取ることがないということと同じくらい。もう彼が私の名前を呼ぶことがない、という事実が悲しかった。
「藍桐、もう一度私の名前を呼んでくれないか」
君が呼ぶ私の名前が好きだったから。そんな願いも届くことなく、霧散する。
「藍桐」
それでも彼の名前を呼びたかった。私が愛した彼の名前を。
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
13
14
15
16
17
18
19
20
21
22
23
24
25
26
27
28
29
30
31
32
Reaction
If you make a mistake, you can cancel it by pressing the reaction.
Custom color
Reset color
広告非表示プランのご案内