零ミリ
2026-04-26 18:26:40
39322文字
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輝石と筆跡2026毎日ワンライ

がんばります

わたしは幸せになっちゃいけなかったのかな?

 くるり、くるり、とランタンの灯りの色が無限に変わっていく。久しぶりに意識を持ち、「会話」をしたが、まだ少しぼうっとしている。ぼんやりと移ろう光の色を見ながら思い出すのは、かつて自分が肉体を持ち、存在であった頃。幼い頃から老年の時期まで。かつて存在であった頃の思い出が浮かんでは消えていく。
 何度も思い出すのは、若く世界を照らすような友の笑顔、そして気が触れたように支離滅裂な言葉を喚き散らす老人の鬼気迫る顔。親よりも妻よりも子よりも、濃密な時間を過ごした。自分に一番刻まれている他者は彼なのだ。
 彼を狂わせた後悔ばかり思い返していたが、かつて同じ先を見ていた時は間違いなく、満ち足りていた。朝起きて彼と会う時間が楽しみで、彼と語り合い笑みを交わし、自分たちの目指す先への想いを新たにし、彼との楽しかった時間を胸に床につく。毎日が輝いていた。それは幸せな日々であった。
 だが、その結末はどうなった? 彼は狂い、全ての人間が傷つき、私は存在をなくした。そして彼は妄執の中死んでいった。
 我々は幸せになってはいけなかったのだろうか?
 否。瞬間、空間が色付いた。そうだ。我々には幸せになる権利がある。死してなお、存在を失ってなお。
 藍桐、君の人生を賭けた賭けはまだ勝つ見込みがある。ここから、まだできることがあるはずだ。隠者の旅は今ここから始まるのだ。