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零ミリ
2026-04-26 18:26:40
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輝石と筆跡2026毎日ワンライ
がんばります
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地下鉄に乗ってどこまでも
ガタガタと巨大な金属が線路の上を走る硬質な音がする。しかも窓の外は真っ暗だ。夜だからではない。地下を走っているのだ。これは地下鉄道。去年東京でも開通した。新しいものが好きな僕と无諦は連れ立って去年のうちに乗りに行った。
だがしかし、去年乗った地下鉄道とは様子が違う。去年乗った地下鉄道の車両は角ばっていたのだか、車両自体も座席も角ばっている印象があったのだが、今乗っている車両は全体的に丸みを帯びている。未来を描いた絵はどういうわけか丸みを帯びた建築物や機器を描きがちなのだが、それらを思い出すような丸さだ。座っている座席の布張りの模様も近未来的だ。もしかしたらこれは夢で未来の地下鉄道に乗っているのかもしれない。
「ねえ、无諦! もしかしてこれって夢なのかな?」
向かいに座っている无諦は僅かに悪戯っ気を口元に滲ませて答える。
「どうだろうな。夢だとしたらどちらの夢だと思う」
これを夢だと認識しているから、僕の夢
……
とは断定できない。僕が无諦の夢の中の存在で、无諦を楽しませるためにそんな認識を待たされている可能性は排除できない。
「どちらでも構わないか! 夢でも无諦と一緒なら目が醒めるまで楽しもう!」
「それがいい」
「それにしても、日本に地下鉄道が通るまで随分かかったねえ!」
日本に地下鉄道が初めて通ったのは去年の1927年のことだ。世界初の地下鉄道が誕生したイギリスは十九世紀のうちに開通している。ドイツのベルリンでも、僕たちが留学中に視察した時には開通していた。
「計画が立ってから開通までは十年ほどかかったらしい。新聞に載っていた」
「そうなんだね! やはり、ヨーロッパのように日本もこれから地下鉄がどんどん増えていくんだろうか?」
「だろうな。鉄道や路面電車は場所が限られるが、地下は理論上無限に空間がある。技術的に難しい場所もあるだろうが、これからの交通は地下が支えていくことになるだろう」
「僕たちの子供がおじいちゃんになる頃には地上を出ずに東京を一周することができるようになるかもしれないね!」
「あり得るな。ところで藍桐、この地下鉄道はどこに向かっていると思う」
「え?」
ガタン、と車両が大きく揺れ、車内の電灯が一瞬消える。えっ、と思った時には点灯したが、一瞬无諦が視界から消えたことに焦った。
「それは
……
无諦が行きたいところじゃないのかい?」
「そうかもしれないし、そうでないかもしれない」
「无諦は知っている、のかい?」
无諦は狐のような笑いを浮かべた。
「なあ、藍桐、自分が行きたいところへ向かっているなんて、一体誰が保証した?」
「无諦!」
无諦の名前を叫ぶと、視界は真っ暗だった。見えなくても分かる。ここは无諦の寝室だ。先ほどの出来事はやはり夢だった。悪夢、とまでは言わないが、最後に妙に緊張感が残る夢だった。
「そういえば今年って一九一六年だよね
……
?」
予知夢だろうか。夢の中では一九二八年のようだった。自分の知っている限り、地下鉄道はまだ東京には通っていない。十年も経てば開通してもおかしくないが。
東京に地下鉄道が開通したら、无諦と絶対に乗りに行こう。現実の地下鉄道は終点があることを確認するために。
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