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零ミリ
2026-04-26 18:26:40
39322文字
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輝石と筆跡2026毎日ワンライ
がんばります
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きみと朝マックする
カチ、とエンターキーを押して変換を確定する。これでこの物語は完成だ。後は藍桐に見せて編集者に送るだけだ。パソコンのモニターの隅に表示されている時刻は6:27。今日は休日だから藍桐が起きてくるまでもう少しかかる。だが、腹が減った。寝室にふらふらと入り、ベッドに眠る藍桐に近付く。
「藍桐、藍桐」
「ん
………………
おはよう、无諦!」
藍桐は目を開けると機械のように跳ね起き、朝の挨拶をする。私自身が早朝に、起きていることがほとんどないためあまり見られないが、藍桐を起こすのは相変わらず面白い。伸びをしながら藍桐は問いかける。
「原稿終わった!?」
「ああ、終わった。後で見せるよ」
「やったあ! 最高の休日になるね!」
「最高の休日の始まりに朝食を外に食べに行かないか」
「いいよ! モーニング?」
「いや、マック」
腹が減っているうえにジャンクな物を食べたかった。普段食にはそれほどこだわりがあまりないが、時折ジャンクな物を食べたくなる。現代人の病気のようなものだ。藍桐は私の答えにニコ、と笑って返す。
「いいね、行こう!」
大学時代に藍桐を知ってる後輩に「宇津木さんってめちゃくちゃ栄養管理しそうですよね」と言われたことがある。私への偏愛ぶりと当時の健康志向からそう見えていたらしい。実際暮らすと、藍桐はファストフードにそれほど抵抗は示さなかった。藍桐自身が忙しいので、素早くカロリーを摂ることは栄養バランスを完璧にすることより重要らしい。もちろん、可能な範囲で一手間加えて栄養バランスを気にすることは多いが、ファストフード自体はしばしば利用するし、私が利用することも咎めなかった。もちろん、一週間毎食それにしたら怒ると思うが。
藍桐はベッドから出て素早くラフな外出着に着替える。私も外出着に着替えて、鍵とスマートフォンだけ持って二人で部屋を出る。
駅前のマクドナルドに向かって歩いていく。まだ夏の本番を迎えていないこの時期の早朝の空気は執筆明け澱んだ身体を清めてくれる。早起きして後悔したことはないのに、朝は起きれないのでこの空気は中々味わえない。
目的の店に着くと客はまばらだった。休日の朝の時間帯はこんなものだろう。注文を済ませ、二人分の朝食を受け取って席に座る。藍桐はソーセージマフィンとサイドサラダとアイスコーヒーのセット。私がマックグリドルベーコンエッグとハッシュポテトとアイスコーヒーのセット。
いっせいに二人してかぶりつく。ベーコンの塩気とパンケーキの甘みが全身に染みる。塩気と甘みと油をアイスコーヒーで流し込むと不健康に身体と脳が喜んでいる。
「あのさ、」
「ん?」
大きな一口を咀嚼して藍桐が話しかける。
「无諦が初めてマック食べてるのを見た時、かなり衝撃的だったんだよね!」
「どういうことだ」
「无諦もこんな庶民的なもの食べるんだって!」
「そんなに箱入りに見えるか?」
「ものすごいお坊ちゃんだと思ってるわけではないんだけどさ! なんか俗っぽすぎるっていうか!」
普通にマックを食べて育ったが、藍桐はまた何か私に夢を見ていたらしい。いつものことなので、適当に聞き流す。
「でも食べるのは下手だよね?」
「まあそれは
……
」
口の可動域が小さいのか、昔からハンバーガーの類を食べるのが下手だった。藍桐と食べると私の方ばかり汚れてしまう。
「だってほら、また口の端にパンくずついてる」
藍桐が身を乗り出して私の口の端を拭う。子供のような扱いにアイスコーヒーを音を立てて啜った。
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