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零ミリ
2026-04-26 18:26:40
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輝石と筆跡2026毎日ワンライ
がんばります
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留学
「いやあ、まさか原田君と同室になるなんてね! 今まであまり話せていなかったから、ヨーロッパに着くまで親交を深めようじゃないか!」
「はあ」
ヨーロッパへ向かう船の割り当てられた部屋に入り、荷物をある程度落ち着けたところで宇津木君が話しかけてきた。船室は二人部屋で、四人の留学生を自分と宇津木君、もう二人の留学生の二部屋に分かれている。四人の中で宇津木君が一番騒がしいので、出来れば他の二人と同室になりたかった。あからさまに気の抜けた返事をしたのにも関わらず、宇津木君はにこにこと手を差し出してくる。
「原田君!」
「なんだ」
「これからよろしく、の握手だ! これから長い留学を共に実りある時間にしようじゃないか!」
「
……
よろしく」
一般的な成人男性の背丈ではあるが、宇津木君の手は平均よりも大きく見える。その大きな手をやんわりと握る。宇津木君は強く握り返し、彼の活動的な性格が握手からも分かった。
「こうやって船の同じ部屋で過ごしていると行きの船を思い出すねえ!」
「そうだな。懐かしい」
「あの時は无諦を原田君って呼んでいたね! まさかその時は无諦とこんな関係になるなんて思っていなかったな!」
船室に備え付けのベッドに並んで座り数年前を回想する。留学の間に様々なことがあった。おそらく、今後の人生の全てを決定づける期間であった。結論としてはこうだ。我々は至高天のその先を目指す。
「全てが上手くいったわけではないけれど、日本でこれから僕たちの第二幕が始まるんだ! ああ、航海している間何もできないのがもどかしいよ!」
「私も同じ気持ちだ。気持ちは分かるが今は幕間をゆっくりと過ごそう」
ベッドの上にくつろいでいた藍桐の手の上に自分の手を重ねる。藍桐は少し慌てたように声を潜める。
「む、无諦! 船室では恋人らしいことはしないって決めたはずじゃ
……
」
「このくらいはいいだろう」
「もう!」
藍桐は口を尖らせながらも頭を私の肩に乗せる。
「日本に戻ったら住まいは別だからな。同じ空間で暮らせるのもこれが最後だ」
「うん
……
」
「素晴らしい日々だったな」
「ああ! きっと死ぬ間際にはこの留学のことを思い出すよ!」
「気が早いな」
二人してくつくつと笑う。なんて楽しい時間なんだろう。二人で留学の思い出を語り合う。
まだ全然語り足りないのに、就寝の時刻になってしまった。
「また明日も話そうね!」
「ああ、おやすみ」
藍桐に触れるだけの口付けをする。下宿の時もこんなことはしていなかったが、もう最後の日々なのだ。これくらい許されるだろう。鳩が豆鉄砲をくらったような顔をした藍桐を残して自分のベッドに入る。明日は何を話そうか、と考えながら目を瞑った。
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