torino_y
2025-07-01 21:55:45
41225文字
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文披き2025

2025年7月に参加した企画「文披き」で書いた『九宝のせかい』短編のまとめです


Day8:足跡


 所用を終えて家に帰ってきたかえでは、玄関前に複数の動物の足跡が付いているのを発見した。やや長い逆三角形のような形の正面側に丸い跡が三つ並んだ、特徴的な足跡がいくつも付いている。大きさがバラバラなので、おそらく一匹分ではなく複数匹だ。加えて足跡はどれも少し湿っていることから、かえではこの足跡の正体を推測できた。
「いろはのお友達が来てるのかな……?」
 いろはというのはかえでの友人で、ケロロデという種族の蛙に似た魔法生物だ。身体の大きさは猫と同じくらいなので、一般的な蛙と比べるとかなり大きい。ケロロデも蛙と同じく皮膚から粘液を出して身体の表面を薄く覆っているので、触るとヌルッと湿っている。
 かえでは引き戸を開けて家に上がった。足元を確認すると、やはり何匹か分のケロロデの濡れた足跡が奥へと続いている。あとで拭いておかなければ。
 足跡を辿った先は縁側だった。軒下に吊るされた風鈴が見える位置にケロロデが三匹並んでいる。その真ん中にいたいろはがかえでに気づいて声を上げた。
「ケロ!」
「ただいま。その子たちはお友達?」
「ケロ〜」
「ケロケロ!」
「ケロロン!」
「こんにちは。ゆっくりしていってね」
 かえでの質問を聞いた二匹のケロロデたちがそれに答えるかのように、順番に鳴きながら伸ばした舌を振って挨拶をしてくれた。かえではケロロデの言葉を理解できるわけではないが、簡単なことならジェスチャーだけでもなんとなく何を伝えようとしているのか分かる。
 三匹のケロロデたちは風鈴がチリンと音を鳴らすたびに、面白そうに飛び跳ねたり、ケロケロと喉を鳴らして歌ったりしている。かえではその様子を見てクスリと笑ってから、その様子を描き残すために紙と筆を取りに自室へ戻っていった。

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