Day17:空蝉
「エディ、ちゃんと飲んでますか〜?」
本日何度目か分からない
真白の問いかけを丸っきり無視して、エドワードは心の底から盛大にため息を吐き出した。
九宝の化身である兄弟が集まったこの宴会が始まってから一時間ほど経過していた。酒に強くない兄弟たちはすでに酔いが回っていて、
真白もその内の一人だった。酒のグラスを片手に掴んだまま、もう片方の腕をエドワードの肩に回してニヤニヤしながら絡んでくる。
「エディが飲んでるのは
……水じゃないですか! もったいないですよ〜お酒飲めばいいのに〜」
「めんどくさ
……あっちでクライドと一緒にフィリと遊んできたらどうだい」
向こうのテーブルではすっかり真っ赤になったフィリベルトのことを、やや赤くなったクライドがからかって遊んでいた。あれはあれで混ざりたくないので、酔っ払い同士で楽しくやってもらって自分のことはどうか放っておいてほしい。
真白は酔って淀んだ目でじっとフィリベルトたちを眺めたあと、思い出したようにエドワードのほうを向き直って話し出した。
「そういえばフィリトは今、人間と契約してるんでしたねえ。あなたは契約しないんですか?」
「
……契約って誰と」
「そんなのウィルに決まってるじゃないですか〜! あなたのお気に入りなんでしょう? 逃げられないうちに捕まえておいたほうがいいと思いますけどね〜」
「それはお前もだぞ。人間の家に居候してるらしいけど、お前の本性がバレて追い出されるのも時間の問題じゃないかい」
「私は最初から契約する気なんてないからいいんです〜。あれとは遊んでるだけですから。でもあなたは違うでしょう? 人間の寿命なんてあっという間ですよ」
「
……余計なお世話なんだぞ」
まだ何か言おうとしていた
真白だったが、新しく栓を抜いたワインのボトルを掲げたユリウスの声に誘われてそのままエドワードのもとを離れていった。
人間の寿命が短いことなんてとっくに知っていることだ。エドワードの
——黒の剣の契約者はその代償により短命の宿命を背負うのだから。エドワードはウィリアムと契約して短い生を縛るよりも、ただの友人としてできるだけ長くそばに居ることを望んでいる。
エドワードは床に転がっているローランドの背中を見つめた。ローランドは最初に一口酒を飲んで、それ以降ずっと床で寝ている。兄弟の中で一番酒に弱いのだ。
そのローランドも少し前に人間と契約していたが、たった一年で死別したと聞いている。契約したところで、魔法で無理やり鎖をかけたところで、命あるものは必ず死を迎え、それを変える力は自分にはない。だったら、とエドワードは思う。
(だったら、オレはウィルと過ごす時間を最後の最後まで大切にしていたい。たとえ
——)
たとえそれが、長い時の中でいつか失われてしまう記憶なのだとしても。
>前の話(Day16:にわか雨)
17≫
>次の話(Day18:交換所)
19≫
>目次へ戻る
1≫
If you make a mistake, you can cancel it by pressing the reaction.