Day27:しっぽ
尻尾相撲、と呼ばれる遊びがある。互いの尻尾同士を絡み合わせ、地面や台などに相手の尻尾をつけるまで倒し合う。要は腕相撲の尻尾版である。
これは当然だが、尻尾のない人間の遊びではなく、動物の尻尾を持つものが多い
獣人族の間で楽しまれている。
尻尾の器用さというのは
獣人族の間でもかなりバラバラだ。たとえば猫族は長くしなやかな尻尾を器用に使うことができるが、強い力を込めるのはあまり得意ではないのが一般的である。対して犬族の尻尾は細やかな動きは苦手だが、力強く動かすことができる。
今、
黄龍の
国のとある広場にて、尻尾相撲大会が開催されていた。数々の猛者たちを乗り越え、決勝戦で相対したのはこの国の門番の二人だ。
一人は東の門番であるチンロン。青龍の力を宿した
幻獣族であり、頭には枝分かれした龍の角、背中側には太くて長い立派な龍の尾を持っている。その尾を一振りを食らえば大人の男を吹き飛ばせそうな重みを感じる。
その対戦相手は、西の門番であるバイフーだ。白虎の力を宿した
幻獣族であり、頭には虎の耳が生え、背中側では長い虎の尾がゆらりと揺れている。その尾は女性の腕ほどの太さがあり、決して細いわけではないのだが、対戦相手であるチンロンの龍の尾と並ぶと明らかに頼りなかった。
チンロンはこの大会にあまり関心のなさそうな顔で、目の前のバイフーの揺れる尻尾を目で追っている。そんな彼をバイフーは不敵な笑みで迎えていた。
「やっぱり決勝はチンロンくんだったね! 負けないよ!」
「えっと、対戦よろしくお願いします、バイフーさん」
両者は互いに背中合わせになると、尻尾を立てて先の方を絡めた。
そして審判の合図とともに、戦いの火蓋は切って落とされた。尻尾の大きさから圧倒的に有利と思われたチンロンだったが、試合は拮抗していた。
バイフーの尻尾は虎の尾に近く、猫族のように力を入れるのが得意ではないと思われがちだ。しかし実際は、バイフーの手が空いていないときに尻尾を器用に使って重い荷物を持ち運びしたり、木の枝に尻尾を巻きつけてぶら下がったりと、白虎の尾はかなりの力持ちなのだ。しかもバイフーは普段から尻尾の筋力も鍛えているから、龍の尾にも負けず劣らず強靭な尻尾に仕上がっている。
試合は徐々にバイフーの勝利へと傾いていった。人型のときの尻尾の扱いに無頓着なチンロンと、日頃から尻尾を扱う訓練をしているバイフーの差が開いていく。用意されていた台に龍の尾が押し付けられ、審判は高らかにバイフーの勝利を宣言した。
「やった! いやー、大人げなくてごめんね!」
「おめでとうございます」
優勝を喜ぶバイフーを、そんな彼女に引っ張られて参加したチンロンは興味がなさそうな顔をして眺めていた。尻尾相撲は、大人が嬉々として参加する遊びではないのである。
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