Day26:悪夢
疲れてくるといつも見る夢がある。細部は毎回少しずつ違うのだが、おおよその流れは変わらない。
夢の中で、カイルはいつも主人であるルシウス国王陛下のそばにいる。そこで普段通りに仕事をしているが、突然右目が激しく痛み出してしゃがみ込んでしまう。右目を押さえていた右手にドロリとした泥のような感触がして手のひらを確認すると、右目が溶けて流れ落ちているのだ。驚く間もなく今度は右腕が見ているそばから痛みとともに内側から溶け出していく。
夢の中でルシウスは何も言わず、感情の読み取れない無表情のまま、その一部始終をただ見ている。
いつも夢はそこで終わる。目が覚めたカイルはびっしょりと汗をかいていて、右腕がジクジクと痛んでいる。耳をすませば雨の音が聞こえることが多い。雨の日になると右腕や右目が痛むことがあるから、その痛みと疲れから見てしまう悪夢なのだろう。
重たい身体に鞭を打ってノロノロとベッドから出て、念のために鏡を確認する。当然だが、右目が本当に溶け出していたことはない。写っているのはいつもと変わらない、元の色よりも薄くなった、左目とは異なる色の気色悪い右目だ。カイルはそれを、国王の従者らしからぬ長い前髪で隠している。
そのまま右腕も確認する。雨のせいで痛みはするが、こちらも本当に溶けたりはしない。いつも通り、まだら模様に変色した醜い右腕があるだけだ。カイルはそれを厚手の長袖と手袋で覆い隠す。
そして、いつものように頭の中に疑問を浮かべるのだ。
(陛下はどうして、こんな私を側近に据えたのだろう)
この疑問は、仮にルシウス本人から答えを聞かされたとしても解決するものではないだろう。これはルシウスに対する疑問であると同時に、カイルが自分自身に対して問いかけているものでもあるからだ。
カイルは俯いて、考えても仕方ない疑問を大きく吐き出した息とともに頭から追い払う。そして気持ちを切り替えるようにテキパキと身支度を整えて部屋を出ていく。国王の側近に相応しい洗練された顔をして。
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