Day13:牙
「歯が痛い?」
そう言って首を傾げたルシウスに対し、相棒である
黒竜は不承不承といった様子で頷いた。ルシウスは最近の相棒の様子を思い返した。
黒竜は慣れあいを好まないドラゴンのため元々口数は少ないのだが、いつにも増して寡黙になっていたような気がする。それに食事の量が明らかに減っていた。腹の調子が悪くて機嫌が悪いんだろうくらいに考えていたが、まさか歯が痛かったとは。
「虫歯じゃないか? 俺は竜の歯医者じゃないけど、とりあえず見せてみろよ。どこの歯だ?」
相棒は嫌々ながらも大きな口を開けた。ルシウスは光魔法を唱えて照らしながら口の中を覗き込む。鋭く尖った大きな牙がずらりと並んで生えているが、手前の方に一本だけ他より黒ずんでいる牙がある。素人でも分かる。絶対にこの歯が犯人だ。
「どう見てもこの歯だな。じゃあ歯医者を呼んでくるからちょっと待ってろ」
光を消して相棒から離れようとしたルシウスだったが、しかしその相棒が行く手を阻むように尻尾を回してきたため思わず足を止めた。
「おい、こういうのは早いうちに対処しといた方がいいぞ。我慢できなくなったから俺に訴えてきたんだろう?
……言っとくが、俺じゃお前の歯をどうしてやることもできないからな。覚悟決めて歯医者に頼みなさい」
ルシウスの真剣な説得に対し、相棒は非常に不満げながらも首を縦に振った。
黒竜は他者に滅多に心を開かない生き物だから、たとえ歯医者が相手だとしても口の中を見せたくないのだろう。その気持ちは分かるのだが、このまま放置していたら今よりもっと酷いことになるのだし、本人もそれを理解しているはずだ。
後日、歯医者によって痛み止めの葉っぱをしゃぶらされたあと、相棒の牙は容赦なく抜かれた。口の中を触られたことで相棒はしばらくへそを曲げていたが、数日して次の歯が生え始めたところでようやく機嫌を直し、食事ももりもり食べるようになった。相棒の歯の治療をした歯医者は、貴重な
黒竜の治療に携われたことを大変喜んでいた。
そしてさらに数日後、ルシウスはそろそろ無視できなくなってきた現実に目を向けようとしていた。そう、歯が、痛いような気がするのである
……。
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