Day31:またね
目を開けると、見慣れた自分の家の前に立っていた。両親とまだ幼い妹、そして自分が暮らす家だ。家の周りを見ると、家の大きさと比べてかなりの広さがある庭と、その先に巨大な森が続いているのが見えた。
(庭がいつもより広く感じるような
……?)
ほんの僅か、違和感。何かおかしい気がするし、どこもおかしくない気もする。
家の中に入ろうと玄関に向かうが、扉にあるはずのドアノブが見つからない。困った、これでは家に帰れない。裏口に回ってみても、やはりドアノブがどこにもない。
大きな声で呼びかけたら、中にいる家族に気づいてもらえるだろうか。そう思って窓を確認すると、一つの窓から明かりが漏れているのが見えた。あの部屋の中に家族がいるのだ。意識すると、中から両親と妹の楽しそうな話し声が妙にはっきりと聞こえてきた。
(おーい、俺はここだよ! 扉を開けて中に入れてくれ!)
ウィリアムは中の三人に聞こえるように大きな声で話しかけた。しかし実際に声が出ることはなく、何度やっても口をパクパクとさせるだけで声が出ない。焦るウィリアムは部屋の窓を叩くが三人とも目もくれず、中の楽しそうな話し声は続いている。
(なんで
……! お願いだ、俺も中に入れてくれ
……そうしないと俺だけ「また」
……!)
そこでウィリアムは不意に動きを止めた。頭が急速に冴えていく感覚。そうか、ここは「あの日」の
――。
顔を上げると、目の前に建つかつての家は真っ赤に燃えていた。すべてが焼けていく臭いが記憶から呼び起こされる。
背後に気配を感じてウィリアムはゆっくり振り返る。後ろには「あの日」お別れをしたはずの妹が立っている。妹はウィリアムを愛おしそうに見つめたあと、満足そうな顔をして「またね」と口にした。
「待っ
……!」
ウィリアムが手を伸ばすが、妹は笑顔を浮かべたまま光り輝く蝶々となって飛び去っていった。虚しく宙を掴んだ手を握りしめ、ウィリアムはキツく目をつぶった。
――目を開けると、見慣れた天井が視界に入った。身体を起こすと、背中が汗で濡れて冷たくなっていた。
嫌な夢だった。何が「またね」だ。分かっているはずなのに、妹に夢の中でそんな台詞を言わせてしまう自分に腹が立つ。妹はもう、どこにもいないというのに。
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