torino_y
2024-08-12 18:38:54
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文披き2024まとめ(Day1~Day31)

2024年7月に参加した企画「文披き」で書いた『九宝のせかい』短編のまとめです


Day12:チョコミント

 聖樹せいじゅの森の屋敷を訪ねたら玄関でクライドに出迎えられ、そのままキッチンまで連れてこられた。
 外は太陽の光がさんさんと降り注ぎ、ジージーと蝉が大合唱している真夏の陽気だ。屋敷の中はいくらか涼しかったが完全に冷却しているわけではなく、ウィリアムの背中はまだじっとりと汗をかいている。
 キッチンまでやって来たクライドはすぐにウィリアムを適当な椅子に座らせて、氷魔法がかけられた冷却ボックスの中からアイスクリームを取り出した。差し出されたそれは緑とも青とも言えない絶妙なグリーンに、黒に近い茶色のまだら模様が入った不思議な見た目をしていた。
「なんだ、これ?」
「アイスだ。俺が作った。食ってみてくれよ」
「クライド作か……
 クライドは実は結構料理をするのだが、作るものが毎回なんというか、攻めているものが多い。実験的な料理が好きらしく、レシピは当然見ないし、突拍子もない食材を豪快に使って新たな味に挑戦しようとしてばかりなのだ。極たまに美味しいこともあるが、大抵は気絶するほど酷い味がする。
 正直、今回のアイスも進んで食べたくはない。見た目からして食欲をなくす色をしているのだ。茶色い部分はチョコレートに見えるが、この青緑の部分が怖い。自分に出してくるということは少なくとも人間にとって毒になるようなものではないはずだが、味に対する信用は全くない。
「さっき真白ましろに食わせたら、ちゃんと食えるって言ってたぜ」
 ウィリアムがあまりにも躊躇するので、クライドが背中を押す一声を発する。九宝くほうの化身の中で一番味覚が信用できるのは真白ましろだ。自らの身体機能を人間に寄せているので、五感も人間のそれに限りなく近い。その真白ましろが食べられるというのなら、少なくとも気絶する心配はなさそうだ。それなら、まだ熱の篭った身体を冷やすためにも、勇気を出してまずは一口食べてみようか。
「い、いただきます」
 恐る恐るアイスを口に運ぶ。口の中に広がるのはスーッとした爽やかな香りだ。夏の暑さを忘れてサッパリとリフレッシュするような、スッキリとした味わい。そこに予想通り茶色い部分のチョコレートの甘さが入ってきて、独特だが確かに食べられる味に収まっている。
「なんだ、見た目の割にちゃんと美味いな。何の味だ?」
「チョコミント。旧世界きゅうせかいで人気だったから、再現してみた」
 ミントと言われ、この不思議な青緑色にも合点がいった。これはミントグリーン色なのだ。本物のミントはもっと普通の緑色に近かったはずだから、爽やかなイメージに合うようにわざわざ青っぽく着色しているのだろう。
 なんにせよ、今回のクライドクッキングは珍しく当たりだったわけだ。ウィリアムは出されたチョコミント味のアイスをすっかり完食し、クライドはそれを見届けて満足そうに頷いた。

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