Day24:朝凪
生まれ育った町は海沿いにあった。海沿いというのは風をよく感じられる土地柄らしく、その町も例に漏れず海風や陸風がよく吹いていた記憶がある。
だが、朝の決まった短い時間だけ、風がすっかり止んでしまう時間があった。カイルはその時間が好きだった。風がまったく吹かないそのときだけは海面が一切波打たず、鏡のように逆さの空を映し出した。海の中にもう一つ空が広がっているようなその光景に、子どもながらに感動したことを覚えている。
そういえば、とカイルは頭に過ぎった過去の光景を思い出す。その朝凪の時間に一人で海を眺めていたとき、海面でポチャンと魚が跳ねたことがあった。その地点を中心に円形に波が広がっていき、空を映す鏡がぐにゃりと歪む。その波打って歪んだ鏡面の隙間に、見覚えのある男の姿を見たことがあった。
あまりにも有り得ないことだったので今の今まで忘れていたが、最近また似たようなことがあったのだ。雨上がりの道を歩いていたとき、道端にできた水溜まりの水面に同じ男の影を見た気がした。一瞬だったこともあり気のせいだと思って頭の片隅に追いやっていたが、子どもの頃にも似たような体験をしているとなるとそうとも言いきれないのかもしれない。
「何それ、怖い話
……?」
「どうなんでしょう」
「その見覚えのある男の人っていうのは誰なの
……?」
ここまで黙って話を聞いていたルシウスが、カイルが有り得ないと言った男の姿について言及する。カイルは首を傾げながら不思議そうに口を開く。
「
私が物心つく前に海で亡くなった、
私の祖父の姿だったかと」
「やっぱり怖い話じゃん!」
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