torino_y
2024-08-12 18:38:54
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文披き2024まとめ(Day1~Day31)

2024年7月に参加した企画「文披き」で書いた『九宝のせかい』短編のまとめです


Day17:半年

 花の種を植えた。この植物は種を植えてからおおよそ半年くらいで花を咲かせる。今は春だから、順調に育てば花が見られるのは秋頃になるだろう。
 順調に育てばなんて言ったが、この聖樹せいじゅの森で順調に育たない植物などない。聖樹せいじゅを中心とした森の中、そしてその外側に広がる宿木やどりぎくにの植物は例外なく聖樹せいじゅと繋がりを持つようになる。植物たちは聖樹せいじゅから生命力を分け与えられ、エネルギーを宿した特別な草木として成長していく。だから聖樹せいじゅの森の中心近くに植えたこの種は、半年後には間違いなく美しい花を咲かせるはずだ。
 半年。人間にとってその時間はどれほどの長さなのだろうか。子供と大人では同じ時間でも感じ方が違うのだと、かつての契約者が教えてくれたことがあった。あなたにとってはどうなのかと尋ねると、時間はあっという間に過ぎ去ってしまうように感じられるが、生きる時間があと僅かとなった自分にとっては一日一日がとても大きな意味のある貴重な時間だと言われた。それを聞いて自分ならどうだろうと考えたが、悠久の時間を過ごす自分にとって時間に価値はないというのがそのときの答えだった。
 だが今になって、本当にあの時間に価値はなかったのかと考え直すことがある。かつての契約者と過ごした一年間は、今まで過ごした代わり映えのない一年間とは確かに違っていたように思う。あの時間には自分にとってどのような意味があっただろうか。答えは出ない。その人が眠る場所に植えたこの花が咲く季節までに、答えは出せるだろうか。

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