Day2:喫茶店
ドアを開けると頭上でカランとベルが鳴った。客の来店を告げる音を聞いてカウンターの中にいたマスターが、いらっしゃいませ、と声をかけてくる。中途半端な時間に来たからか、店内の客はまばらだ。クライドは空いている適当なテーブル席に座った。
「レモンティー、ホットで」
「かしこまりました」
マスターが慣れた手つきで紅茶を淹れ始める。この喫茶店はクライドのお気に入りだ。ここのマスターが淹れる紅茶は美味い。茶葉もレモンもこだわりをもって選んでいると、以前話したときに言っていた。
そういえば、その話をしたのはどれくらい前のことだっただろうか。この町に引っ越してきてからそれなりの年月が経ったような気もするし、つい最近引っ越してきたばかりなような気もする。そんなことを考えたところで正確な年数など覚えてはいないのだが。
「お待たせ致しました」
「どうも」
レモンティーを持ってきたマスターの髪には、ところどころに白い色が混じっている。この人間に初めて会ったとき、髪はどのような色をしていただろうか。これもまた、よく覚えていない。
カップを持ち上げると紅茶の良い香りが漂った。この喫茶店に通い始めてから何年経ったかなんて分かりはしないが、この紅茶をいつまでも楽しめたらいいと思う。もはや思い出の中にしか残っていない、かつてのお気に入りの店たちのようにはならないように。
(ま、この願いが叶ったことなんて、一度もありゃしないんだがな)
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