Day22:雨女
ジリジリとした日差しが降り注ぐ暑い夏の日、
楓は
篝火が住み着く廃寺を訪れていた。いつものごとく、妖怪や
妖族についての話を聞きに来ているのだ。
篝火が出した冷たい麦茶を
楓は勢いよく飲んで、一息ついてから話を切り出した。
「妖怪の中に『雨女』っているんですか?」
「妖怪じゃなくて
妖族ね。いるよ。雨を呼ぶやつ」
「そんな力があるなら、雨が降らない土地では神様扱いされそうですね」
楓の一言に、
篝火は意外にも考える仕草を見せた。干ばつが続いた場合、神に雨を願う人々の願いを届けることで雨を降らせてもらう雨乞いという風習が各地に存在している。そんな中で雨を降らせる力を持った者がいれば、神として崇められても不思議ではない。
「んーどうだろ。雨女はそこまで強い
妖じゃないからなー」
「そうなんですか?」
「たしかね。雨を呼ぶっていっても絶対じゃないし、そんなにたくさん降らせられるわけじゃないから、雨女に捧げ物しても全然雨が降らないってかえって怒りを買いそうじゃない?」
なるほど、そう言われればたしかにそうだ。絶対の力を持つ神と違い、あくまでも人の一種とされる
妖族にすぎない雨女を神の代わりとして祀り上げるのは、人にとっても雨女にとっても不幸でしかないだろう。わずかでも自然現象である天候に影響を与えられるというのは大層なことだが、そのせいでその身に余る重すぎる期待と重圧を背負わされるのがどれだけ辛いことか、
楓には容易に想像できてしまう。
「
楓ちゃん、急に落ち込んでどしたの
……?」
「いえ、ちょっと雨女の気持ちを想像して
……」
「ええ
……? 雨女の知り合いでもいた?」
「いないです」
なんじゃそりゃ、と言って
篝火は大きく伸びをした。茶碗に注いだ麦茶がぬるくなっているのに気づき、氷氷と唱えながら魔法で氷を作り出し、麦茶の中に放り込んでいく。そういえば
篝火は
火車なのに火とは正反対の氷の魔法が使えるんだなと考えて、
楓はなぜか可笑しくなって少し笑った。
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