Day10:散った
草が茂るなだらかな丘。ひと気のないその場所で、ウィリアムは
真白と対峙している。ウィリアムは短剣を、
真白は刀を構えている。両者の準備ができたことを確認し、ユリウスが声を上げる。
「判定は僕がするから、僕の言うことをちゃんと聞いてね。少し怪我するくらいはいいけど、殺さないこと。危ないと思ったら止めに入るよ。それでは、訓練開始!」
ユリウスの合図と同時にウィリアムは駆け出した。素早く距離を詰め、相手の顔を狙って短剣を横に振るう。
真白は冷静に刀でそれを受け止める。互いの刃がぶつかり甲高い音を立て、赤い火花が散った。
真白は受け止めた短剣をそのままの勢いで横に流すと、くるりと刃をウィリアムに向けて間髪入れず横薙ぎに斬りつける。しかしそれを読んでいたウィリアムは後ろに飛び退いて躱し、刀の届かない距離から無詠唱の雷魔法を放つ。詠唱なしで放たれた魔法に不意をつかれた
真白は目の前に迫った雷撃をすんでのところで躱したが、その隙をついて背後に接近していたウィリアムの短剣が
真白の首筋を狙って薙ぎ払われる。
(もらった!)
ウィリアムが勝利を確信したのと同時、
真白はニヤリと笑いながら片膝を付いて大きくしゃがみ込んだ。確かにとらえたはずの急所が目の前から消えたことに動揺したウィリアムの短剣は
真白が振り上げた刀に弾き飛ばされ、無防備に晒された喉に向かって刀の切っ先が突き出された。
「そこまで!」
ユリウスの声で戦闘訓練の終了が告げられる。
真白が繰り出した刀は紙一重のところでウィリアムの首を貫くことはなかった。
「なかなか強いですね、ウィル」
真白は刀を下ろしながら、心底楽しそうにウィリアムに声をかけてくる。
「よく言うぜ。お前に先の行動全部読まれてちゃ勝ちようがないっつーの」
「あなたの無詠唱魔法には本当に不意をつかれたんですけどね」
刀を鞘にしまった
真白が右手を差し出してくる。ウィリアムも短剣を鞘にしまい、右手を握り返して握手に応じた。得物は違うが、武器であることを本質とする
真白やその兄弟たちからは戦い方について学ぶことは多い。次はエドワードとユリウスの手合わせが行われる。人ならざるモノたちの闘い方は真似できないものも多いが、少しでも吸収させてもらいたい。ウィリアムは
真白とともに、他の
九宝たちがいる観戦席へと向かっていった。
>前の話(Day9:ぱちぱち)
10≫
>次の話(Day11:錬金術)
12≫
>目次へ戻る
1≫
If you make a mistake, you can cancel it by pressing the reaction.