torino_y
2024-08-12 18:38:54
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文披き2024まとめ(Day1~Day31)

2024年7月に参加した企画「文披き」で書いた『九宝のせかい』短編のまとめです


Day29:焦がす

 外は快晴。前日に積もった雪が太陽の熱で少し溶け始めていて、地面が白く輝いている。せっかく良い天気だが、ユリウスとエステルは今日一日、小屋の中で過ごす予定だ。
 調理台でフライパンを握って緊張した面持ちのユリウスに、エステルが後ろから近づいていってフライパンの中を確認する。フライパンに乗っていたのは見るも無残な消し炭だった。これで通算三個目の消し炭の誕生に、エステルは思わず頭を抱えた。
「師匠、また焦がしてるじゃん」
「こ、焦げちゃったね……
「なんで……?」
 エステルがユリウスの手元を疑いの眼差しで確認すると、フライパンの下で炎が強火で燃え上っていた。原因特定。火力が強すぎて焦がしたのだろう。この焦がし方も三回目である。焼き始める前、弱火で焼くように口を酸っぱくして言ったのに、何度言っても出来上がるのは真っ黒に焦げた消し炭だ。
「師匠、この火は?」
「さ、最初はもっと小さい火で焼いてたんだけど、全然焼けないから途中で少しだけ火を強くしたんだ」
「もー、火を強くしたら焦げるに決まってるでしょ!」
「ご、ごめん。せっかくエステルが料理を教えてくれてるのに上手くできなくて……
「味付けもせずにただ焼くだけなんて料理とは言わないよ。まったく、こんな状態でよく今まで一人で暮らせたね」
 エステルの一言に、ユリウスは返す言葉もなく黙って落ち込んでいる。エステルは次の練習用に獣の肉を小さく切り分けながら、こっそりユリウスを覗き見る。ユリウスは生み出してしまった哀れな消し炭をフォークで刺して、そのまま口に運んでいる。出会ったときからそうだったが、ユリウスは食べ物にあまり頓着がないようだった。味覚も鈍いのか分からないが、エステルだったら絶対に食べられない消し炭もああやって何食わぬ顔で食べてしまう。しかし消し炭を食べるのは身体に悪いような気がするので、エステルはユリウスにはまともな食事を取ってほしいと思っている。だからエステルがいなくてもユリウスが一人で料理をできるように、今日は一日こうして料理を教えることにしたのだ。
「さ、師匠。お肉はまだあるからもう一回やってみよ。今度はあたしも一緒に見てるから」
……わかった。やってみるよ」
 それにユリウスのためだけじゃない。いつもは戦い方の師匠として教えてもらうことしかできないから、こうやって自分が一から料理を教えられるというのはエステルにとっても楽しいことだった。エステルはフライパンに切り分けた肉を乗せ、二人で並んで肉が焼けていくのを見守った。
 その日、ユリウスの家で新たに生まれた消し炭の数は八個に及んだ。もちろん、成功数はゼロである。

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