Day20:摩天楼
町としての正式な依頼ということで厄介なキノコ型の魔物の討伐依頼を引き受けたところ、その魔物がばら蒔いた胞子をもろに浴びたエドワードの身体が手乗りサイズにまで縮んでしまった。そんな馬鹿みたいなことがあってたまるかと一瞬思ったが、妖精族はみんな人の身体を小さくしたり大きくしたりする魔法を使えるわけだし、魔物の中にそんな現象を起こす種類がいても全然不思議じゃない。魔物の方は、小さくなっても破壊力は変わらなかったエドワードの魔法によって
柄の部分に風穴をあけられた結果、動かないただの巨大キノコになっている。絶対に毒キノコなので食べるつもりはない。
「さて、どうしたもんかな
……」
「こういうのは大抵、時間が経てば元に戻るぞ」
「だといいけど。てかエド、なんでそんな砂まみれなんだ?」
「胞子が付いたまま君に触ったらよくないと思って、砂を擦り付けて落としてきた!」
エドワードはウィリアムの足元で胸を張って誇らしげな顔をしている。サイズと、砂浴びという行為からうっかり小鳥を連想してしまう。小さすぎて足元を歩かれると踏んだり蹴ったりしそうだ。エドワードが強靭すぎてこっちの足が弾き飛ばされそうだが。そう考えるとまったく小鳥らしさはない。
「とにかく一旦宿に戻ろう。エド、色々危ないから俺の肩にでも乗っとけ」
「ありがとう! 妖精になった気分だぞ!」
「落ちるなよ」
肩に十分の一スケールの相棒を乗せ、ウィリアムは町に戻る。キノコの魔物を倒しに行った二人の成果に興味津々な町の人々に取り囲まれ、エドワードが落ちないよう必死に自分の肩を守りながら、なんとか宿へたどり着いてホッと息をつく。
「なんかすごかったね」
「自分たちの生活がかかってるから気になるのは分かるけどな」
「みんなの勢いもすごかったけど、オレはみんなの大きさがすごかったぞ!」
「ああ、身体が縮んだからか」
「そうそう! 町も、まるで巨人の町に迷い込んだみたいで変な感じだぞ! 人も建物も、目に見える全部が空まで届きそうなほど高く見える!」
ウィリアムはその話を聞いて、なんとなく理解できるような気がした。今より背が低かった子どもの頃、両親に連れられて買い物に行った店は記憶の中では遥かに大きく感じられていたものだ。しかし成長した今の自分が行ってみるとどれもが記憶より小さくて、子どもの頃に暮らしていた町とは違う世界に来てしまったような、なんだか不思議な感じがする。
そんなことを考えてみると、身体が縮んだエドワードが今度は小さな子どものように思えてなんだか可笑しかった。思わずクスッと笑ったウィリアムを軽く小突いたつもりのエドワードの肘は、小さいくせにえぐれるほどに痛かった。
翌日、エドワードの身体は元の大きさに戻っていた。小突かれたウィリアムの太ももには案の定、赤黒いアザができていた。
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