torino_y
2024-08-12 18:38:54
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文披き2024まとめ(Day1~Day31)

2024年7月に参加した企画「文披き」で書いた『九宝のせかい』短編のまとめです


Day30:色相

 聖樹せいじゅの森には色とりどりの花が咲いている。真白ましろは周りに咲いている花を眺めて歩きながら、前から興味があったのですが、と言って隣に浮いているローランドの方を向いた。
わたしたち九宝くほうを生み出した創造石は、生物の魂を取り出して花に変える魔法が使えるじゃないですか」
「そうだね」
「あれ、魂によって花の色が変わるらしいんですよ」
「そう」
わたしたちの花は何色になると思います?」
 森の様子を観察していたローランドは真白ましろの質問を聞いて、意図を図りかねるといった様子で真白ましろを見つめ返した。だが真白ましろは特に何かを言う素振りを見せないので、ローランドは真白ましろの言ったことに訂正を入れる。
九宝くほうに魂はない。だから花も咲かない」
「例え話ですよ。もしわたしたちにも魂があったとしたら」
 ローランドは首を傾げながら、さも当然と言った様子で返答する。
九宝くほうとしての色がそのまま花の色になるんじゃない」
わたしなら白、あなたなら青ってことですか」
「うん」
「まあ、やっぱりそうですかね」
 真白ましろはそう言って肩を竦め、ローランドを置いて森の奥へ歩いていった。ローランドは先を歩く真白ましろの後ろ姿を見つめながら、真白ましろの考えることはよく分からないなと思う。自分たちに魂がないのは真白ましろも知っているはずなのに、どうしてあんな例え話をするのだろう。考えたところで、ないものの色を確かめることはできないのに。ただ、なんとなく、真白ましろはこんなつまらない正解とは違う答えがほしかったのだろう、とは思う。真白ましろはたぶん、本当の自分とは違う、架空の自分の在り方に憧れを抱いている。
真白ましろのそういうところ、少し人間みたいだ)
 もし真白ましろが魂を持った本物の人間だったら、彼の魂の色は一体何色になっただろう。答えは分からない。目の前に広がる色とりどりの花のように、生きている者の可能性は無数にあるのだから。

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