Day15:岬
以前、海に近しい知り合いの一人から、とある岬にまつわる話を聞いたことがある。曰く、近くの村ではときどき、海に呼ばれていると言う者が現れていた。海に呼ばれた者は他の人の話を聞かなくなり、親しい人に説得されても一切聞き入れず、海へ向かおうとする。そうして近いうちに村のすぐそこにある岬から海へ飛び込んでしまい、二度と戻っては来ないのだそうだ。結局、その村は今では村民が全員海に飛び込んでしまって廃村になってしまったのだとか。
「おいらからするとよくある話だけど、
楓ちゃんは多少興味ある感じ?」
ざっと概要を話し終え、
篝火は黒猫の面の下から見えない目を
楓に向けて問うてくる。
楓は顎に手を当て、考える素振りをしている。
「ただの眉唾物の怪奇譚かもしれないけど、魔法生物か魔物が関わってる可能性もありますね
……」
「そーお?」
「人の言葉を真似て人を惑わして、おびき寄せて食べてしまう魔物がいると聞いたことがあります」
「そりゃーおっかないね!」
篝火は両腕で自身の身体を抱えるようにして、おどけたように怖がる仕草をしている。そんな
篝火には目もくれずに
楓は予め準備してあった遠出用の荷物を手に取って、
篝火と向き合った。
「調査したいので、場所を教えてもらえますか?」
「
……一人で行くの? もしホントにそんな魔物が出るなら危ないんじゃない?」
「いきなり現地に乗り込むわけじゃないですよ。まずは付近の村で話を聞いて信憑性を確かめるつもりです」
「ふーん。じゃ、おいらが特別に道案内してあげるよ」
「
……一緒に行くんですか? でも
火車さんがいなくなったらこのお寺がもぬけの殻になっちゃうんじゃ
……」
「ここ、元々廃寺だからもぬけの殻でも問題なーし! それにおいらもこの話のことで気になることがあるしね」
「気になること?」
楓は首を傾げたが、
篝火は意味深に微笑んだだけで返事をしなかった。恐らく
篝火の役割とやらに関わることなのだろう。
楓が聞いても詳しいことは教えてくれないが、
篝火は
妖族としての役目で仕方なくこの廃寺にいるのだと言っていた。
篝火に促されて地図を広げ、二人で行き先を確認する。それほど遠くはないからすぐに到着できそうだ。こうして
楓と
篝火の不思議な旅が始まった。
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