Day28:ヘッドフォン
久しぶりに出くわしたルノーの出店で商品を物色していると、エドワードがあっと驚いたような声をあげた。不思議に思って近づくと、エドワードは寒い地方で使う耳当てのようなものをしげしげと眺めているところだった。それはウィリアムが知っている耳当てよりも硬質な素材で作られているようで、つるりとした見た目がなんとも物珍しい。
「なんだ、これ。耳当てならもっとふわふわしてあったかそうな素材で作るよな?」
「それ、実は
古の
国ですっごく苦労して仕入れた超レアアイテムなんですよ!」
「へえ。で、どうやって使うんだ」
ルノーは嬉々としてその道具について説明を始める。これは耳当てではなく「ヘッドフォン」という名前らしい。その言葉の意味はまだ分かっていないが、
古の
国の古代の遺跡を調査する中でそのヘッドフォンの実物が発掘され、名前も明らかになったのだそうだ。
古の
国では早速ヘッドフォンの構造を調べ上げ、同じ形のものを作ることに成功した。調査の中で、恐らくヘッドフォンは単品で使うものではなく何か別の道具と組み合わせて使うものだろうと考えられているが、正確な使い方はまだ分かっていない。
「使い方分かってないのかよ」
「はい!
古の
国でも色々な説が出ているそうですが、僕が面白いと思ったのは、これは遮音器ではないかという説です! ウィリアムさん、ちょっと耳当てみたいにして付けてみて下さい!」
ルノーに勧められてウィリアムはヘッドフォンを手に取った。硬質な見た目のイメージ通り、耳当てよりも重量はずっしりしている。丸い部分を両手で掴み、耳を覆うようにして装着すると、途端に外の音が遠ざかったような感覚がある。まったく聞こえないわけではないが、風が吹く音や草が擦れる音といった自然の音が一斉に消え、無音の世界に包まれる。
ウィリアムはヘッドフォンを外して元の場所に戻すと、感心したように口を開く。
「たしかに面白いな」
「でしょ! 買います?」
「俺はいらないけど、エドは興味あるか?」
「オレもいらないぞ!」
興味深そうにヘッドフォンを眺めていた割に、エドワードはあっさりと興味を失っている。ウィリアムは不思議そうにしつつも、特に追及することなくルノーと他の商品の話を始めた。
エドワードはぽつんと置かれたヘッドフォンを一人で見つめながら、ぼんやり過去と未来に思いを馳せる。これでまた昔みたいに音楽が聴ける時代が来たら、そのときは音楽プレーヤーと一緒にヘッドフォンを買うのも悪くないかもしれない。そのときは今日のことを思い出して、ウィリアムと一緒に笑えたら良いなと、そんな風に思うのだ。
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