Day9:ぱちぱち
竜の
国の王都は今日も活気に溢れている。この国は
竜騎士団のおかげで魔物被害も少なく、様々な面で余裕がある。魔物に家や店を壊される心配がないので町を発展させることができるし、街道を安全に移動できるので外の国から商人や旅人を呼び込みやすい。
竜の
国の中でも
竜王城の目の前にある王都は特に発展していて、いつも多くの人が商談に励んでいたり、旅人相手に元気に呼び込みなんかをやっていたりする。
相棒のドラゴンの背から降りたルシウスの耳に、観衆から上がった歓声と、続けてパチパチと拍手する音が届いた。少し先の広場で何かやっているようだ。身体の大きい相棒をその場に残し、人混みを抜けて一人で広場に出る。観衆の拍手を一身に浴びていたのは、王都で最近話題沸騰中の劇団の座長と、そのパートナーの小型のドラゴンだった。周辺にはビラを配る他の団員も何人かいるようだ。ルシウスが近づくと座長の女性はすぐに気づき、嬉しそうに話しかけてくる。
「これは国王陛下、こんなところでお会いできるとは! またお城を抜け出して来られたのですか?」
「国王なのに城にこもりきりで城下の様子も知らないなんて恥ずかしいだろ?」
「あまり側近の方を困らせないであげて下さい」
「気をつけるよ。それで、ここで何を?」
「ちょっとしたパフォーマンスです。近々、劇場で新作をやることになりまして、その宣伝も兼ねているのです。お席をご用意しますから、陛下も是非観劇にいらして下さい」
「いいね! 楽しみにしてるよ」
二人が話をしているそばで、劇団のドラゴンが口から噴き出した炎を魔法で巧みに操って火の鳥を作り出し、観客からまた大きな拍手を貰っている。いくら小型といえど、ここが
竜の
国でなかったらドラゴンというだけで恐れられ、あっという間に人々は逃げまどっているかもしれない。この
新世界ではドラゴンという存在は圧倒的な力を持ち、人と相容れることはない、人間社会を脅かしかねない恐ろしい存在だ。
竜の
国だけが例外的に、人とドラゴンが互いに信頼によって結びついていて、同じ社会の中で生きることができる。拍手を貰ったドラゴンはとても誇らしげな様子だ。これはこの国だからこそ見ることができる光景だ。
(俺の役目は、この光景をこれからもずっと守り続けていくことだ)
ルシウスは人とドラゴンが共に暮らす王都の景色を、慈しむように見つめた。どうかこの幸せな暮らしが、これから先も保たれますように。
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