DRRV11037
2025-08-19 14:09:28
55991文字
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DRRV:1章探索編

Shoot the Moon



モノクマとモノクマーズが去った直後、私は更新されたモノパッドを確認していた。“校則”が追加されている。


【校則】
・才囚学園での共同生活に期限はありません

・学園内で殺人が起きた場合、全員参加の学級裁判が行われます

・学級裁判で正しいクロが指摘できれば、殺人を犯したクロだけがおしおきされます

・学級裁判で正しいクロを指摘できなかった場合、クロ以外の生徒であるシロが全員がおしおきされます

・クロが勝利した場合は才囚学園から卒業し外の世界に出ることができます

・シロが勝ち続けた場合、最後の2人になった時点でコロシアイは終了です

・夜10時から朝8時までの“夜時間”は、食堂と体育館が封鎖されます

・才囚学園の学園長であるモノクマへの暴力は、固く禁じられています

・モノクマが殺人に関与することはありません

・モノパッドは貴重品なので壊さないでください

・“死体発見アナウンス”は、3人以上の生徒が死体を発見すると流れます

・才囚学園について調べるのは自由です。特に行動に制限は課せられません

・校則違反を犯した生徒は、エグイサルによって処分されます

・校則は順次追加されることがあります



本当、なのかな」

私はぽつりと呟いた。

何もかもが奇妙で恐ろしかった。なぞめいたモノクマとモノクマーズ、この配布されたモノパッド、私たちのために造られたという学園、信じられないほど大きな檻……ここまででも十分おかしいのに。この異常を受け入れて適応しろというように、校則、なんて。淡々と隙なく記されたルールは、冗談でしょと笑い飛ばすことを許してくれない。本気だと伝わってくる。私たちに本気でコロシアイをさせる気だと伝わってきてしまう。

……それでも、私は……

「ルール言うても横暴すぎやろ。殺すとか殺されるとか全然現実味ないし

小栄こざかえくんは首を振って無理矢理笑い飛ばそうと試みるも、頬が引き攣ってしまう。不安からだろうか、モノパッドを割れそうなほど強く握りしめていた。

彼のような拒絶反応を起こす子は他にもいた。

「こ、殺し合い、なんて本気なの?」
黒原くろばらくんはびくびく怯えて背を曲げているし、

「ど、どうしよう、どうしようどうしようどうしよう怖いよぉ
顔を真っ青にした形代かたしろさんはふらりどこかへ歩き出そうとする。

「ま、待ってください!今離れるのはヤバヤバですって」

「そうだよ、君。皆で一緒に対策を考えよう。周りの人々が恐ろしく見える気持ちはよく分かるけれど……一人になるより誰かと共に過ごしたほうが、命の危険は少なくなるものだ。」

三品みしなくんは追いかけて、肩に優しく手を添えた。形代さんはその感触に驚き、小さく声を漏らすと振り返る。

……………、」

「君が心配なんだ。いつでも守れるよう、傍にいておくれ。……な?」

ご、ごめんなさい。ありがとう。」

純真すぎる言葉に、気分が少し落ち着いたみたい。彼女はいちどぺこりと頭を下げると、三品くんに手を引かれて戻ってきた。

「いいんだよ。ところで君の名前は?」

「名前を知らない人相手に言う台詞じゃないですよあれ……実は前前前世からの知り合いだったりしません?」と改瀬かいぜさんが慄く。

へェ。」

さかきくん?」

「ん?あぁ、三品の言った、みんなで対策を考えるってやつ、いいなーと思って!」

「そうだね。みんなで話し合えば、脱出方法が見つかるかも

「とりあえず声かけてみるかッ。よーしっ、みんな注目!」

彼がぱんぱんと二回手を叩くと、少人数でひそやかに会話していたり一人で離れたところに立っていたりした生徒たちが、一斉にこちらを見た。

「今から全員で話し合いを行うッ。司会はオレだ!」
得意げに親指で自身を指した。

「なぜ貴方が仕切るの?」

「べ、別にいいだろッ。」
天探あめのさくさんの冷たい言葉をかわす。

「はい!!言いたいことがありまぁす!」
桜衣くんたちの、明るいほうの子が元気よく挙手した。

「おっ!どうした、昼間ひるま?」

「はい!俺おやつ食べたーい!」

「は?」

「えっとね、ドーナツとポテトチップスと、クッキーと、ケーキと、マカロンと、」

昼間くんは己の食欲を発表すると、食べたいおやつを指折り数え始めた。

「はい!ハニートースト三種アイス盛りはどうかな?」

三品みしなくんの重たいブローに続けて、

「はい!苺ジャムとピーナッツバターのパン!」
改瀬さんと、

「白玉ぜんざい追加だよー」
白跳しらとびさんが追撃する。

「静かに!!!おやつは後っ!」
早速の仕切り直しだ。

全員が静かになるのを待って、深く息を吸い込んでから、榊くんはみんなに語りかけた。

「オレたちはみんなモノクマの被害にあった人間同士だ。同じ舟に乗ってる仲間同士、誰かを殺そうなんて考えるヤツはいねーよな?難しいかもしれねーけど、やっぱ全員でここから脱出したい!そこでだ、何か良いアイデアあるか?気づいたことでも何でも、どんどん言ってほしいッ」

凄い。周囲を惹きつけて照らす、太陽みたいな笑顔だ。モノクマのせいでじめじめ暗かった場の空気が、榊くんの眩しい力で“協力”へ舵を切る。

そーね。全員脱出が実現可能な目標とは思えないけど、悪くない方針だと思うわ。」
裁門さいもんさんが同意して続ける。

「一番分かりやすい障害は、あのデッカい壁よね。アタシぐるっと回って調べてたんだけど、どこにも扉や穴がついてなかったの。ヤバくね?」

「そんな。扉や穴がどこにもなかったら、一体どうやって自分たちは入ってきたんですか……?」
改瀬さんが困惑を見せた。

「うーん、連れてきた後から大きな檻をぽんっと被せればいいんじゃないかなー?」
白跳さんが可愛い髪形を揺らして発言した。

「が、学園の敷地を丸ごと覆う規模で、ぽんってやるのはえっと、難しいんじゃないかななんて。ご、ごめんっ。ぁ、あ、裁門さん、出入口を塞いだ痕跡とかも、みみ見つからっなかった……?」

「え?何。ごめんもごもごしてて聞き取れなかったんだけど」

「ひィっ!?あ、ごめんなさ、な、何でもないですッ」
聞き取ってもらえなかった黒原くろばらくんは、ぺこぺこと頭をシェイクするみたいに何度も下げて引き下がった。

「あー出入口を塞いだ痕跡もなかった?って訊いてます」

改瀬さんが通訳した。まさか初めて見る超高校級の通訳の光景が、日本語対日本語になろうとは。

「無かったわ。アタシも壁のプロじゃないから、巧妙に隠されてたら気づけないけど。確信が持てないなら自分の足で調べてみたら?あ!ってかさ、探偵的にはこの状況をどう見てるわけ?見解とか聞かせてよ」

「え"っ……僕?いや、えーっとあの、んん……
彼はここで、すううっと深呼吸して心を落ち着かせた。先程よりは大きい声で言う。

「壁は、あくまで見せかけ。僕らに“脱出の方法はない”と思いこませるための、仕掛けに過ぎないんじゃないかな。」

「仕掛けー?」
白跳さんが首を傾げた。私もよく分からなくて同じ仕草をしている。

「まるで、既に理解したかのような口ぶりね。その推理、ぜひ聞かせてもらいたいわ」と天探さん。

すると、黒原くんはまるで頭の中にあるものを全てひっくり返したかのように、何の順番も脈絡もなく思考を吐き出した。

「えっ全然理解したとかそういうのではないしただの思いつきなんだけどぇーっと……。ま、まずあの壁ってなんというかこう、いかにもなデザインじゃない?檻に閉じ込められたことを、印象づけてるというか。そ、そのっ、壁を配置した首謀者の発想になるといいんじゃないかなって、つまりは、ぁの、果ての壁相当デカいでしょ?だから僕が思ったのはあの壁はハリボテじゃなくて僕らを誘拐する前から本気で時間をかけて建てたものだってことかな、あれを爆破しようって思ったならやめた方がいいかも。だけど、結局食料の運搬とかモノクマのエネルギーとか、ほら、何かと生きるには外部との繋がりがなきゃやってけない。通路は必ずあるはずだよ

黒原くんはこれを一息に喋った。

………っ長いわ!!!!!!」

「ごめ"ん"なさいっ!!」
小栄さんのツッコミに思いきり頭を下げた。そろそろ首がもげてしまうんじゃないかと心配になってくる。

「短くせい短く〜!こういうのを“ようよう追えない”って言うんや!」

……“要領を得ない”?」と改瀬さん。

「それ!」

「韻は踏めますね」

「えっ?陰を、踏む?」

確かに黒原くんの説明はぐちゃぐちゃで分かりにくかったけど、私は身を乗り出して彼を褒めた。

…………凄いよ、黒原くん!壁を見ただけでそこまで思いついたの?流石は超高校級の探偵だね」

「はぁゎぁッ」
彼は顔を隠しながらよく分からない声を出した。嬉しいときの鳴き声だと解釈してみる。

なにせ私はあの壁を見たとき、推理なんて以ての外、思考を巡らせるどころではなかったのだ。酷く取り乱して首謀者の思惑通りだったとしたら、かなり恥ずかしい。
黒原くんがここにいてくれてよかった。もし彼の言う通りなら、まだ希望がある。

楠木くんが更に付け加えた。

「まぁそうだね。黒幕にそういう意図があるなら、通路は地下にあるんだろうね。果ての壁になるべく近いところかな?」

「良いんじゃねーか、それ!壁付近の建物や地面は気にしといた方が良さそうだなッ」