DRRV11037
2025-08-19 14:09:28
55991文字
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DRRV:1章探索編

Shoot the Moon


噴水


才囚学園の庭の最奥には、黒い鳥籠があった。
不思議な話だけれど、映画のなかで映画を撮影するみたいに、檻のなかに鳥籠がある。人間を寄せ付けない赤い扉がその唯一の入口だった。

「蔓に覆われ、鳥籠の中の様子を覗くことはできない。まるで秘密の箱庭だ。」

三品くんは扉をコンコンとノックした。わざとらしく聞き耳を立てる。それから私たちのほうを振り返ると、片手の人差し指を口元に当てて悪戯っぽく微笑み、片手で赤い扉を開いた。

ガチャリ。

そこは、コロシアイの世界から隔離するように造られた秘密の花園だった。薄い色の石を削って造られた噴水や流水のオブジェから、清く透き通った水の優しい音色がたえず響く。無数の石造りのプランターに植えられた花々は白色や桃色に淡く染まり、ドーリア式ともトスカナ式ともつかない柱には赤々と咲いた薔薇の蔦が巻きついている。

「皆をぜひこの場所に案内したかったんだ!」

鳥籠を通して差し込む日射しが、三品くんのさらさらしたポニーテールをいっそう清く艶やかに輝かせた。口元に柔らかな笑みを湛え華奢で色白の腕を広げたその姿は、睫毛の長い蝶みたいに神秘的で───ミステリアスだった。

「きれい、だね」

私は漠然と呟いた。

「だろう?体育館に集められる前、僕はひとりで屋外を探索していてね……驚いたよ!まるで小さな神殿じゃないか。ひょっとするとこの狭い学園に、妖精たちの隠れた遊び場を見つけてしまったのではないか、と思ってね」

「妖精っ?」
形代さんがくすくすと笑った。

「あなた不思議な人なのね」

「そうかな?」
相変わらず笑いながら彼はそう反応した。というのも、三品くんはいつでも笑っている。霧に覆われた湖のような瞳にうっとりとした優しい親愛を浮かべて。笑っていないときを見つけるほうが難しいくらいだった。

「分かるよ。三品くんってミステリアスだよね。浮世離れしたオーラがあるっていうか……ときどきそうじゃない部分が垣間見えるところも、素敵だと思うよ」

私の言葉に対して、三品くんは本当におかしそうに眉を下げると、笑った口元を手で隠した。

「浮世離れだなんて!ああ、こういう仕草が駄目なのかな。……でも、どうか覚えていておくれ。少しばかり違っているとしても、僕は皆のことが大好きだよ!」

三品くんはそう語りかけると、目を細め、安心させるように微笑んだ。一方、こちらはドキリとしていた。これまで私が過ごしてきた平凡穏やかな日々では───映画や小説に描かれる壮大な物語を除いて───これほどまでに情熱的な告白をまっすぐ聞くことがなかったのだ。

……特に君たちを見ていると、弟や妹といった言葉が思い浮かぶからね。」

三品くんの言葉の続きを聞いてしまうと、なんだ、深い意味はなさそうだと安堵した。三品くんもまた、私とは文化圏が違うようだ。

「でも君きょうだいいないよね?」
黒原くんの言葉に、三品くんはにこにこした。

「そんなことまでご存知だとは!流石は超高校級の探偵だね。」

そういえば、黒原くんはどうしてここまで人のことに詳しいのだろう。三品くんの原稿流出事件も、さも現場を見たかのように語っていたけれど……まさか流出させた犯人が黒原くんなんてことはないよね。

ともあれ、三品くんは「いつも考えていることがあるんだ。」と呟いた。

長く濃い睫毛を瞬かせると、深みのある青の瞳に無数のうっとりした虹の夢の光を反射させた。そうしてアルトの音色で歌うように語る。

「僕は一人っ子だから憧れてしまうのさ。賑やかな家庭とは、歳の近い子供と遊ぶとはどのようなものなのか……よく思いを巡らせるんだよ。」

形代さんが口元に微かな笑みを浮かべた。
「みゆも一人っ子なの。きょうだいかぁ、考えたことなかったけど。」

「ふふ、私も一人っ子だよ。お兄ちゃん欲しいなぁとは思ったことあるんだ」

私も同意した。お父さんもお母さんも帰りが早いほうだから、寂しい思いはしたことがない。だけど、きょうだいと遊んだり喧嘩したりそういう全く異なる日常を体験してみたいと思うこともある。

「ぼ、僕も一人っ子、です、一応」
黒原くんがおずおずと手を挙げた。なんとなく、そんな雰囲気はしていた。

「素晴らしい偶然だね!ふふ、いっそ僕たちできょうだいに為ってしまうのも楽しそうだ。」

三品くんは目を細めた。煌めく海の双眸は、サファイアのように美しかった。

優等生に見えておっちょこちょいな“超高校級の小説家”の三品博行くん。
おどおどしているのに、人を見抜く鋭い目を持つ“超高校級の探偵”の黒原舟くん。
ふんわりしていて独特な感性がある“超高校級の人形作家”の形代初夢さん。

私たちのグループは、大きな成果こそ出なかったけど互いのことをたくさん知れた気がする。それもまた大事なことだよね。


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