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DRRV11037
2025-08-19 14:09:28
55991文字
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DRRV:1章探索編
Shoot the Moon
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寄宿舎
私たちが寄宿舎へ歩いていると、三品くんが、思わず漏れた感想というふうに呟いた。
「本当に綺麗な景色だ
……
。」
それから言葉を付け足す。
「おっと、探索といっても気負わず焦らず、無理せずでいこう。のんびりしているときのほうが物事をよく見つめて大切なものに気がつける。それに、結局は君たちの心が一番。共に話して、互いを知り、散歩で気分転換さえできればそれで万々歳だからね。」
三品くんは、頑張らなくていいよと目標をずらした。
誰もが絶対に帰りたいはずなのに、ここでプレッシャーをかけないよう気を遣えるのが、三品くんの精神の凄さだ。
「三品くんもだからね?
…
無理しないでね」
私はそう返した。
しかも彼は、人と関わるのが苦手そうな子を積極的に仲間に引き入れて、自分が注意深くリードした上で、みんなを安心させようと言葉までかけている。気を張りすぎてやしないかと思う。
私の言葉にしなかったところまでさらりと拾い上げて、三品くんは軽やかに笑った。
「あはは。僕は生徒会長だったから自然と板についているかもしれないね。」
生徒会長と聞いても、驚きはなかった。
鉄のワイヤーがまっすぐ入った人形のような背筋の良さと、隙のない愛想に唇の端から指の先まで支配された完璧な立ち居振る舞いを見れば、学校一の優等生なのは明らかだ。あまりにも上品なので、周りの空気にきらきら星が散って見える。品行方正という言葉は彼のためにあるに違いない。
そのとき、暫く沈黙を続けていた黒原くんが突然声をかけた。
「み、三品くんってさ
…
」
「どうしたんだい?」
歩みを止めた三品くんが振り返る。艶々したポニーテールが揺れて、深海の青い瞳が、長く濃い睫毛とともにぱちぱちと大きく瞬いた。
「
…
『糸切探偵事件簿』の最新話流出させたんだっけ」
「なぜそれを!?」
三品くんは顔を真っ赤にして叫んだ。
私は咳き込んだ。
「いっ、『糸切探偵事件簿』って
…
?」
私はそのタイトルに心当たりがない。形代さんを見下ろすと、彼女もゆるゆると首を横に振る。
「僕が書いてる小説のシリーズだよ
……
。」
耳まで赤くなったまま、口元だけぎこちない微笑みを維持して、目は逸らし続ける三品くんが、かろうじてそう答えた。
するとなぜか黒原くんが言葉を継ぐように早口で解説を始めた。高速で動く唇は2倍速の映画みたいでついていくのがたいへんだ。
「小中学生向けのミステリー小説シリーズなんだ。人の縁を断ち切る力を持つ糸切探偵が、行く先々で事件を解決し、拗れきった人間関係を一刀両断する。トリックが易しいから推理小説入門にもぴったりだし、動機にヒューマンドラマ要素もある。でも何より、糸切探偵のクーデレが死ぬほど可愛い
…
っていう」
黒原くんは細長い睫毛を瞬かせた。
「三品くんは
…
カフェで執筆するルーティンがあるんだ。それである日、ほら、あの、あるでしょ、名前出さないけど、女子高生と女子大学生がたむろしてる注文の長い忌々しいコーヒーチェーン店。あそこで、パソコン、開けて、その、チョコの飲み物を片手に、原稿を執筆してて。
…
背後の席の客にスクリーンを撮影されたんだよ」
三品くんはもう振り返らずに、妙に足早になった。それでも耳が燃えるように赤いのが分かる。
「それで『糸切』の最新巻の原稿が流出して、拡散されて、トレンド入りした。」
「そ、そうだったんだ
…
」
私は呆然とただそれだけを呟いた。それ以上に何を言えばいいか分からない。
三品くんはすたすたと歩いている。
意外とおっちょこちょい
…
らしい。
「
……
三品くんはただお洒落に作業してただけでしょう。後ろの席の人が、わざわざ撮ってインターネットに投稿しなかったら、そんなことにならなかったのに
…
災難だったね」
いたたまれなくて、私はフォローを入れた。
「
……
。」
それがかえっていたたまれなさを強めたらしい。彼は何も言わなかった。こんな空気にしておいて黒原くんも何も言わなくなった。最悪だ。
それから不意に三品くんは立ち止まって、少し肩を震わせた。振り返らずにこう言う。
「
……
だってどう考えても格好良いだろう
……
?ノワールを執筆しながらダークモカフラッペを嗜んでいる暗闇作家って
……
。格好良いと思ってしまったんだよ
……
。」
ああ、そういう雰囲気に憧れるタイプでもあるんだ
……
。第一印象に次から次へとひびが入る。
それから彼は、寄宿舎の前を通り過ぎそうになり、やっと立ち止まった。
「
……
さぁ!ようやく寄宿舎についたね。」
そのときにはいつものニコニコ笑顔に戻っていた。
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