柚子子
2024-10-04 11:19:34
174956文字
Public ベリーベリー
 
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微原作沿 爆豪長編(4)

サイトに掲載している長編の第四章です。今回の話から最終話までのネタバレ(コミックス未収録回)を含みます。

 思いがけずイレイザー・ヘッドと会えたまでは良かったのだが、その結果、爆豪くんの病室に行くのがずいぶん遅くなってしまった。今日はこのあと静岡に帰るので、昨日のように時間があるわけではない。
 慌ただしく爆豪くんの病室のドアをノックすると、ちょうど出ていく光己さんと入れ違いになるところだった。
「あ、名前ちゃん。帰る前に勝己の退院の書類出してくるから、少し待ってて」
「えっ、爆豪くん、もう退院できるんですか?」
「そうそう。ものすごく治癒能力を高めてくれるおばあさんが、雄英から来てくれてね。明日には退院だって」
 そう聞いて病室のなかを覗けば、昨日までの処置着姿ではなく、ふつうのシャツとジャージ姿の爆豪くんが、ベッドに腰掛けている。退院がちかいとは言っていたけれど、まさかこれほど早いとは思っていなかった。
「ところどころ、こまかい傷は残ってるけど、もう立って歩くぶんには問題ないって。このまま雄英の先生と一緒に、寮に戻ることになったんだよ」
「そうなの?」
……
 返事をしない爆豪くんに、光己さんが溜息を吐いた。いつもならここで怒号のひとつでも飛ぶところなのだろうけれど、さすがに付き添いも三日目となれば、光己さんも多少疲れているのだろう。
「この子、あたしが名前ちゃんのこと連れてきたの、まだ根に持ってんだ。まったく、いつまでも拗ねてないで、ちゃんと名前ちゃんにお礼くらい言いなよ」
「誰が言うかクソが」
「人に心配かけといてそんな態度はないだろ」
 光己さんは溜息を吐く。それから爆豪くんに「ちゃんと、お礼」と釘を刺して、ナースステーションのほうへと歩いて行った。
 病室に入り、室内をぐるりと見回す。まだうっすらと朝食のにおいが残る室内。窓は開けられないのか、少しだけ空気がこもっていた。
 床の上には大きなボストンバッグが置かれている。床頭台もベッドサイドもきれいに片付いているから、すでに退院に向けて荷物をまとめた後なのだろう。
 昨日と同じくベッドサイドに近寄って、そばの椅子に腰かけた。座っている爆豪くんは、昨日よりもずっと楽そうに見える。昨日はやはり、なんとなく腹部をかばうような座り方をしていたように思う。
 爆豪くんが何も言わないので、私から話を始めることにした。
「えーと、なんていうか」
「あ?」
「気持ちだけ受け取っておくね。お礼」
「勝手に受け取んな!」
 爆豪くんが吠えたあと、一瞬だけ眉根を寄せた。大きな声を出すと、まだ傷口が痛むのだろうか。退院できる状態になっているとはいうものの、本来は一日二日で完治するようなケガではなかったはずだ。無理を押しての退院であることは疑いようがない。
 爆豪くんの意思なのか、それとも雄英からの要請なのか。雄英に戻るのであれば、何かあってもすぐに対応ができるのだろうとは思うけれど、心配なことに変わりはない。
「私もこのあと、光己さんと一緒に帰るよ」
「さっさと帰れ」
「爆豪くんも退院なんだね。病み上がりなんだし、あんまり無理せずにね」
「とっくに全快しとるわ」
「全快はしてないんじゃないかなぁ、知らないけど」
 それでも、退院できるだけましなのだろうとは思う。緑谷くんをお見舞いしようとしたときのことを思い出し、何ともいえない気分になった。
 本当ならば昨日、爆豪くんのお見舞いのあとに少しだけ、緑谷くんの病室をのぞくつもりでいた。けれど、ナースステーションでその旨を伝えた結果、返ってきたのは「まだ目を覚ましていないので面会謝絶です」という言葉のみ。緑谷くんの病室すら、私には教えてもらえなかった。
 もちろん私には、そこで食い下がる理由もない。そうですか、とその場は私もあっさり引いて、そのまま黙って家に戻った。
 緑谷くんがまだ目を覚ましていない。そう言われたことが気になりはじめたのは、その日の遅くになってからだ。もしかしたら爆豪くんよりも緑谷くんのほうが、もっとひどいケガをおっているのかもしれない。その可能性に、遅ればせながらやっと気がついた。
 爆豪くんがさっきから不機嫌なのも、緑谷くんがまだ退院できないからだろうか。あるいは、緑谷くんとのあいだにまた何かあったのか。
 いずれにせよ、緑谷くんには早く全快してほしい。それまでできるだけ長く、病院で療養していてほしいとも思う。
 本当は爆豪くんだって、もっとしっかり入院していたほうがいいのだろう。けれど状況が、彼にそれを許さない。
 顔を上げ、視線を窓に向ける。カーテンを開けた窓の向こうには、先週までとなにも変わらない、初春のさわやかで淡い青空。けれどその青空の下に広がる街並みは、先週までとはもうまったく違うものになっている。
 治安は悪化の一途をたどっている。先週まで、昨日までと同じものなんて、きっとひとつもありはしない。
「家についたら、避難の準備に取り掛からないとなぁ」
 思いつくまま話すと、爆豪くんが「知ってんのか」と鼻を鳴らした。
 公式発表はまだされていないけれど、全国的な避難所の開設は、もはや公然の秘密のような状態になっている。最初はヒーロー科生徒の家族への内々の打診から始まったのだろう。それが各学校への根回しなどしているうちに、関係省庁、警察、ヒーロー、そのほか様々なところから情報はもれていった。
 私の場合は、学校からの連絡でそういう措置が始まることを知った。私の高校は雄英にちかいので、避難所として開放こそしないものの、必要に応じて雄英に場所や物資の提供、そのほかさまざまな場面で協力していくことになるという。光己さんが先んじて静岡に戻るのも、避難準備をしなければならないからだ。
「避難所、どこ入んのか決めてんのか」
「それなんだけど、正直決めかねてる」
 私の答えに、爆豪くんが眉根を寄せた。私は説明をつづけた。
「親とも電話して、うちからいちばん近いヒーロー科かなって話してるんだけど、まだちゃんとは決めてないみたい」
 県下には、ヒーロー科を擁する高校や専門学校がいくつかある。そのうち指定避難所指定を受けているのは雄英と、ほか三校を数えるのみ。そこに移動することが困難な住民やインフラ事業の従事者は、市町村の施設や病院が中心になって、フォローしていくことになるらしい。
 その県内四か所の避難所のうち、最大の規模と収容人数を誇るのが雄英高校。かつて敵の侵入を許したことがあるといっても、ほかのヒーロー科設置高校に比べれば、やはりその堅牢さは群を抜いている。敵侵入以降にセキュリティを高めていることも踏まえれば、現状もっとも安全な場所といっても過言ではない。
 最寄りの避難所ではなく、雄英を選んで避難を考えている市民は少なくない。反対に、雄英こそ今後の戦いで最前線になるだろうからと、あえて別の避難所を選ぶ雄英の近隣住民がいるとも聞く。
「最寄りの避難所で悪いことねえだろ。最低限のセキュリティがねえ施設はまず、避難所の候補に入んねえ」
「そうなんだけどね」
 避難所選びにおいて、安全面の問題をどうするかが、まずひとつ。そして私の場合はそれとは別に、もうひとつ悩ましい問題があった。
「じつは夢咲女子の生徒から何人か、雄英にボランティアを出すことになっててね。炊き出しのお手伝いとか救護とか……。そのボランティアの生徒は、避難民と一緒に雄英に入ってくださいってことになってる。ほら、あんまり出入りが多いと良くないから」
「そいつらの家族はどうすんだ」
「その場合は家族も一緒に雄英ってことになるね」
 話しながら、胸がひどくざわついた。落ち着いて話しているけれど、そんなのはふりだ。本当はさっきから、ずっと胸がざわつきつづけている。
 理由なんて考えるまでもない。自分のことは、自分が一番よく分かっている。
 ボランティアだなんだと聞こえのいい言葉を使っているけれど、結局のところそこにあるのは打算でしかない。隠しようのない下心だけが、たしかにそこに存在している。
 一度避難所に入ってしまえば、爆豪くんとはめったなことでは会えなくなる。いつまで避難生活が続くかは分からないけれど、市民の安全を守るための避難生活である以上、そう頻繁に避難所の外に出られるわけではないはずだ。杜撰な出入りの管理は、危機管理上の大きな問題になる。
 一方の爆豪くんは当然、雄英に戻る。彼らは仮免許を持つ学生として、プロヒーローの手が足りないところに、補助的な役割で仕事をふられるのかもしれない。あるいは、来るべきときに向けて各々すべきことをするか。
 いずれにせよ、爆豪くんにも外出の自由はなくなるはずだ。それどころか、自由な時間すら減ると考えたほうがいい。
 そんな生活のなか、どうすればこれからも爆豪くんと会えるのか。簡単だ。私が雄英に避難すればいい。
 爆豪くんが雄英に戻ることが決定しているのならば、私がそこにいけばいいだけだ。そうすれば、避難生活に入ってからも、ときどきは顔を合わせることができるだろう。そんな下心が、私のなかにははっきり存在している。目の背けようもないほど、大きな存在感を持っている。
 そして私は、爆豪くんに「雄英にしろ」と言ってほしいのだ。私と同じことを、爆豪くんにも思っていてほしい。だからこそ、胸がざわつく。期待が、欲が、そこにあるから。
 けれど、
「やめとけ」
 静かに、爆豪くんは言った。
「てめえは雄英来んな」
「な、」
 なんで、と言うより先に、爆豪くんが視線で私を黙らせる。言葉を飲み込んだ私に、爆豪くんはいつものように声を荒げもせず、感情の薄い凪いだ表情で告げた。
「近所で十分だっつーのに、わざわざ雄英まで避難しにくる理由がねえ。むしろ俺がぶっ倒れてんの見たあとなら、てめえんとこの親にとっちゃ雄英なんて、かえって心配の種にしかならねえだろ。ただでさえ俺の入院見舞いだのなんだの、じゅうぶん振り回してんだ。……もういい」
「も、もういいって、なに……。だって、雄英は安全なんだよね。だったら親のことだって、説得すればちゃんと、」
「別に雄英が安全じゃねえって話じゃねえ。つーか安全じゃねえなら、有象無象のモブどもをなかに入れねえ」
 爆豪くんがベッドに腰かけたまま、少しだけ身体を前に傾けた。向かい合った私との距離が、ほんの数センチだけちかくなる。
「狙われるリスクがあるからこその、堅牢さだろ。近くに住んでて最寄りの避難所が雄英ってやつや、何らかの事情で雄英が都合いいってやつ以外は、わざわざ望んでくるようなもんでもねえよ。どうせバタついてるだろうし、人が多けりゃそのぶん厄介なこともある」
 爆豪くんの言葉はどれも理路整然としていて、悔しいくらいに正論だった。知らず、私はきつく口を引き結ぶ。
 そんなこと、私だって分かっているに決まってる。こんなときでさえなかったら、私だってこんなことは言い出さなかった。こんな、理屈よりも感情を優先していることが丸分かりな、バカで世間知らずなことは。
 だけど、仕方ないではないか。私がどんな気持ちで蛇腔のニュースを見ていたか、どんな気持ちで光己さんに連れて行ってほしいと頼んだか、どんな気持ちで静岡に帰ったか。
 どんな気持ちで、目を覚まさない爆豪くんの、血の気のひいた顔を見つめていたか。爆豪くんは知らないから、だからそんなことを言えるのだ。
 私がどれだけ、爆豪くんと離れることを怖いと思っているのか、そんなことすら、爆豪くんは知らないから。
 爆豪くんは悪くない。分かっていて、だけど、それでも、嫌だった。間違ってるのが私なのは分かっていて、それでもやっぱり、うなずけなかった。
 そんな私を見て、爆豪くんはひとつ、溜息を吐きだした。
「こんだけ危ねえことばっかんときに、娘が自分の身の安全ほっぽりだしてたら、そんだけで親は不安なんじゃねえか」
 まるで子どもに言い含めるような、大人びた物言いだった。子どもじみた下心を隠せもせず、こうして駄々をこねている私とは違う。子どもな私を怒鳴りつけもせず、爆豪くんは静かにいさめている。
「安全な場所にいろ、親ァ安心させろっつーのが、んな納得できねえことかよ」
…………
……だいたいな、へたにてめえとの距離が近ェと、こっちの気ィも散んだわ」
……うん」
 今度はすなおにうなずいた。うなずくしかなかった。ここまで言われてしまったら、私が折れるしかない。
 爆豪くんはきちんと、物事の道理を考えている。自分がすべきことを考えて、浅はかな思考に踊らされずに、理性的に物事を判断している。
 私とは、ぜんぜん違った。戦場でプロに混ざって一端のはたらきをするからには、子どもじみた考えは捨てないといけないのかもしれない。
 爆豪くんはもう、私なんかよりずっと先にいってしまったんだ。子どもじみたワガママな感情に振り回されている私とは、もう別のところを見ているんだ。
 そう思ったら、鼻の奥がつんと鋭く痛んだ。今までも何度も、泣きそうな気持ちになったことはある。それでも多分、爆豪くんの前で泣いたことはなかった。
 今、こんなことで泣きたくない。正論でいさめられて泣くなんて、みっともないまねは絶対にしたくない。ぐっと全身に力をこめて、こみあげてくる感情を押しとどめる。ゆっくりと息を吐きだして、暴れそうになる心をおさえつける。
 多少の時間はかかったけれど、それでもどうにか、自分を御すことができた。
「うん、わかった」
 感情がふちから溢れてしまわないよう、声をおさえて私は答える。
 このまま爆豪くんといると、自分の幼さと惨めさに耐えられなくなりそうだ。
 病室の外に出ようと、一度椅子から腰を上げようとした、そのときだった。
 爆豪くんがお腹をかばいながら、おもむろにベッドからおりる。そして何を思ったのか、そのまま一歩前に進むと、爆豪くんは私の目の前に立った。
 足と足がほとんどぶつかりそうな、誇張なしの至近距離。
「え、な、なに……
 首を後ろにぐっとそらせて、私は座ったまま爆豪くんを見上げた。あまりにも近すぎるので、椅子から立ち上がることもできない。また爆豪くんと視線を合わせるために、私はほとんど頭上を仰ぎ見るような姿勢をとる必要があった。まっすぐ前を見ていると、爆豪くんのお腹を近距離で直視するはめになる。
 爆豪くんは、至近距離からじっと、私を見下ろしていた。先ほどまでの凪の表情と比べると、そこには少しだけ、いつもの爆豪くんらしいむすっとした雰囲気があった。
「おい根暗。てめえ、なんか勘違いしてんじゃねえだろうな」
 見下ろした爆豪くんが、凄むように声を低める。ひく、と私の喉が鳴る。
「勘違い、してないけど……
 行儀よく返事をしたにもかかわらず、爆豪くんはなぜか盛大な舌打ちをお見舞してきた。なんでだ。
「クソが、てめて俺の言ってる意味まじでまったく、微塵も分かってねえな」
「わ、分かってるよ……。大事な時期だから、近寄るなって……、邪魔にならないようにどっか行ってろってことだよね」
「違ェんだよアホが。……いや、違わねえだろうがアホが!」
「なになに、どうしたの? 情緒が不安定すぎるんだけど」
「んなカスな言い方してねえだろうが」
「爆豪くんに物の言い方を直されることあるんだ……
「茶化すな」
「はい」
 叱られ、私は口を閉じた。爆豪くんが一歩下がる。私も後ろにそらしていた首をゆっくりと戻し、正面の爆豪くんを見据えた。
 爆豪くんと視線がぶつかる。炎のような赤が、ほんのかすかな揺らぎを見せる。もう一度瞼を開いて見せてほしいと願った、鮮やかな赤の瞳が、どこか惑うようにして、私をとらえていた。
 つかのま、爆豪くんは無言で私を見つめた。やがて、不本意そのものといった顔で舌打ちをしてから、彼は言った。
「物理的に会える距離に……、すぐ近くにてめえがいりゃ、こっちは顔のひとつも見たくなんだろ。けどもう、そういう状況じゃねーんだ。……弛ませたくねえ」
 爆豪くんの手が、こちらに向けて伸びてくる。私の頭にふれた手が、そのままするりと、すべるように顔の横を通っていく。すべり、撫でた指はそのまま、私の右の耳に軽くふれた。
 そこにあるのは、爆豪くんからもらったイヤーカフ。
 爆豪くんは指先で、私の耳殻をつうとなぞった。やわらかく、やさしく、確かめるように。
 ひ、と喉が引き攣ったような声がもれる。むっと爆豪くんが眉根を寄せたあと、私の耳をぎゅっと引っ張った。
「ちょ、い……った!」
「痛くねえわ、大袈裟に騒ぐな」
「ひど……
 暴力行為をはたらいておきながら、この言い様。まじでこの人、緩急のつけ方がえぐすぎる。
 信じがたし、という顔をして精一杯遺憾の意をアピールする私に、爆豪くんは言った。
「いいか、てめえは俺から見えねえとこにいろ。全部終わらせるまで、俺がちょっとくらい手ェ伸ばしたとこで届かねえ場所で、呼吸殺してじっとしてろ。……で、」
 爆豪くんが、ふいに身をかがめる。息を詰める暇もなく、気付けば私は爆豪くんの腕の中にいた。
「俺が勝つとこ、ちゃんと見てろ」
 抱きしめられた腕の外から、押し殺した声がする。心が震えた。胸がいっぱいになって、遺憾の意も全部どうでもよくなって、私は言葉を手放した。
 爆豪くんが、ぎゅうと私を閉じ込めている。その窮屈さこそが愛おしくて、心地よくて、そしてこれ以上ないほどに苦しい。
 ああ、やっぱり、こんなふうにじゃなくて、こんなときじゃなくて、もっと他のときだったらよかったのに。
 こんなふうに、危険な場所に爆豪くんを送り出さなきゃいけない、そんなときじゃなければよかった。
 目頭が熱くなってくる。涙をどうにか堪えながら、ふいに、付き合う前に爆豪くんと一緒に見に行った、あの映画のことを思い出した。
 死地に赴くヒーローを送り出すヒロインの話。あのとき私は、あのヒロインを見て何を思ったのだったか。愛も恋も知らないのに、知ったような、さかしらなことを考えたのではなかったか。
 今ならわかる。爆豪くんのことが好きで、好きで、大好きで。その気持ちでいっぱいで、その気持ちだけで今、私はここにいる。恋をしないなんて、できなかった。爆豪くんが危ない場所にいくことが分かっていたとしても、好きは勝手に大きくなった。
 好きだから、一緒にいたかった。
 好きだけでは、今は一緒にいられない。
「学校ねえんだろ」
「うん」
「耳の、外したら殺す」
……うん」
 爆豪くんの腕のなかでうなずく。私に今できることは、たったそれだけだった。