【創作|馬軸】春雷 芽吹- 春の嵐

※支部からの移植版です。文面そのままです。第一話~第三話までのクラシック編。

Attention
・この作品は競走馬とそのジョッキーを中心に描いていますが、実在する団体とは何の関係もない創作作品です。
・実際の競馬に関してわからない部分は調べていますが、事実と異なる点やありえない点もあるかと思います。そこについては創作だと割り切ってお楽しみいただければ幸いです。
・実在する競走馬をモデルにした競走馬が登場します。名前がもじってある場合があります。




影を踏んだ。勝てると思った。ダービー、菊花賞二冠を__牝馬の身ながら獲れると確信した。だが、差し返された。半馬身のリードでは足りなかった。それどころかゴールしてもまだ余力を残している。ロジェールマーニュは生粋のステイヤーなのだと今更のように認識させられた。

圧倒的なスピードでねじ伏せられる。鞍上と共にさらに強くなるロジェールマーニュの凄まじさに、瀬川は悔しささえ覚えなかった。
純粋に、白綾后子とロジェールマーニュの勝利に祝辞を浴びせられるほどには、何も悔しさを覚えなくなった。

「おめでとう、白綾。ロジェールマーニュ」
「いやぁ……まだ現実感があれへんけどね。……おおきに」

ゴーグルを外して、后子は瀬川に言う。どこか照れたように笑う彼女は本当にふわふわしていて、瀬川は菊花賞制覇を達成した現実感の無さに酔っているような印象も受けた。


「せやけどさぁ、瀬川」
「? ……何だ?」
「惜しかったな。次があんで。気張りや」


「は?」と呟きかけた。心の奥で怒りの炎が燃え上がる。
だがそれと同時に瀬川は漸く気付いた。
あまりにも遅すぎる気づきは瀬川の心に鋭く切り込み蹂躙していく。悔しさといら立ちが入り混じったような、辛いようで苦い味が広がった。