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アスナショウコ
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【創作|馬軸】春雷-極光
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【創作|馬軸】春雷 芽吹- 春の嵐
※支部からの移植版です。文面そのままです。第一話~第三話までのクラシック編。
Attention
・この作品は競走馬とそのジョッキーを中心に描いていますが、実在する団体とは何の関係もない創作作品です。
・実際の競馬に関してわからない部分は調べていますが、事実と異なる点やありえない点もあるかと思います。そこについては創作だと割り切ってお楽しみいただければ幸いです。
・実在する競走馬をモデルにした競走馬が登場します。名前がもじってある場合があります。
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一枠一番を引き当てたフジサワコネクトは、落ち着いた確かな足取りで返し馬をこなしてゲートへ向かった。その様子を見ていて思うが、これまでのフジサワコネクトよりも一層絞って己を削ぎ落としてきたな、という印象を受ける。
ロジェールマーニュは外枠一七番だが、戦法はこれまで同様に『先頭を譲らない』一択なので正直に言って枠番は関係ない。スタートさえ綺麗に決まってしまえばあとはハナを進むだけ。
どこぞの軍師が言うが、勝負に奇計も切り札も要らぬ、とはこういうことを言うんだろうなと頭の隅で思った。流石にロジェでも観客の前では緊張してくるようで、少し返し馬の動きが硬い。
私はゲートのそばまで移動した後ロジェの目元を少しくすぐって馬体を撫で、出来る限り緊張を解そうと努めた。顔に触れている私の手に擦り寄る様は猫のようで可愛いが、ゲート周辺は異様な空気に包まれている。
偶数番の馬から順に枠入りすることになっているが、どの馬も枠に入ろうとしない。寧ろ何かに近寄ることを恐れているような、そんな雰囲気さえ気取った。
動かない馬たちの視線の先には、銀に輝く芦毛の馬体を持つフジサワコネクトがいた。
鉄骨娘。芦毛の最強牝馬。
威圧感。貫禄。言語化できない圧が今の彼女にはあった。ただそこにいるだけなのに、だ。枠入りを待っているだけなのに、この存在感。フジサワコネクトの鞍上にいる瀬川と、フジサワコネクトが放つ気迫が周囲の馬たちを威圧し怯えさせている。ロジェはそこまで、という風だが他の馬たちはそういうわけにはいかないらしく一向に動かない。鹿毛の馬体を持つ一頭が少し後ずさった。
それほどまでに強烈な、勝ちたいという想い。勝利への執着心。余りにも鋭利な勝利への渇望がそこにある。近寄れば確実に斬られる、そんな風にさえ思うほどには、強い想い。
だがそれがどうした? 私とロジェールマーニュは唯、先頭を走るのみ。
そう言い聞かせる。意識の外だ、とは言えない。そんなことを言えば嘘になる。だがそれ以外の選択肢などありはしない。
私は自分でも驚くほどに落ち着き払っていた。その私の落ち着きに納得したのか、ロジェは私の指示に従って枠へ向かう。その様子を見た他の馬たちも枠へ向かうが、一向に他の馬は入ろうとしなかった。
「
……
なんだ、この空気
……
なんか
……
怖いな
……
」
ぼそり、とカメラを担いでいたテレビ局員が言う。同感だ。今年の菊花賞は荒れそうな気がする。依然として枠に入りたがらない馬たちはゲートの周りで足を踏んで怯えている。
内枠で強烈な闘志をビシバシとロジェと私へぶつけてくるフジサワコネクトと瀬川の気配は無視できるものでもない。嫌でも感じさせられる「こいつの前へ行きたい」という執着が、私の背骨に食らいついている。
菊花賞は、最も強い馬が勝つ舞台だ。クラシック路線の最終戦、三〇〇〇メートルの長距離で争われる。スタミナ・パワーが重要なこのレースならば、スピード型のロジェよりフジサワコネクトのほうに軍配が上がると考える者も多いだろう。加えてこの気迫だ__発送時刻が数秒と迫っているというのに一向に枠入りが終わらないぐらいに、他の馬へ影響を及ぼす強いモノ。
本当に牝馬か? と疑いを掛けたくなるほどに強い馬。まさしく鉄骨の如く強靭な脚で終盤、最後方から爆発的な加速で突っ込んでくる馬。そしてその強さは意志にも宿る。
(__鉄骨娘の名は伊達やあれへんな/じゃないな)
本当にそう思う。まぁ、だから私らがどうかするわけではないんやけど。強い馬やということはデビュー当時から知ってる。新馬戦以降、皐月賞でロジェに負けるまで無敗やっためっちゃ強い牝馬や。誰が見ても強いのは知ってることで、疑う余地はない。
発走時刻を過ぎても枠入りが終わらないので、五分遅らせてでのスタートとなる、とアナウンスが競馬場に響いた。ロジェ含め三頭の馬が枠に入っていたが一度出て、もう一度枠入りをやり直す。奇数から入れます、と係員が案内する。一枠へフジサワコネクトが入る__それを見た奇数番の馬たちもどこか安堵したように枠へおさまっていった。偶数の馬たちは緊張がほどけてきたのか、落ち着いた足取りで枠へ入っていく。
ロジェの集中も途切れていない。ただ前へ、という目標だけを見据えている。
____スピードの先へ。前には誰もおらず視界へちらつく馬の影もない。
そんな先頭を走り続ける。見えるのは芝の緑と空の青だけ。
誰も、ロジェールマーニュという馬の前を走ることはない。
先頭にいるのは青毛の馬が一頭のみ、ロジェールマーニュだけがただ馬郡から突き抜けて走る。
ただひたすらに前へ。その決意が私の心を燃やす。
「ただ前へ。スピードの先へ、行こう。
……
ロジェ」
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