【創作|馬軸】春雷 芽吹- 春の嵐

※支部からの移植版です。文面そのままです。第一話~第三話までのクラシック編。

Attention
・この作品は競走馬とそのジョッキーを中心に描いていますが、実在する団体とは何の関係もない創作作品です。
・実際の競馬に関してわからない部分は調べていますが、事実と異なる点やありえない点もあるかと思います。そこについては創作だと割り切ってお楽しみいただければ幸いです。
・実在する競走馬をモデルにした競走馬が登場します。名前がもじってある場合があります。


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「ほっ……北海道や~~!!」
「白綾、北海道は初めてだったか?」

空港に降り立ち、私はぐいー、と縮こまっていた背筋を伸ばす。横にいる瀬川は腹が立つほど清々しい顔で問いかけた。先日の日本ダービーを終え、私は神代さんの持っているもう一頭の馬『スノーホワイト』に騎乗して函館スプリントステークスに出るべく、北海道へやって来た。ちなみにだが北海道競馬に参戦するのは初である。今までの私と言えば夏の間は栗東トレセンで雑用をこなして食い扶持を稼いでいた(食材を対価に労働していた)。
なお、ロジェールマーニュはダービー二週間後から栗東トレセン近くの牧場に放牧に出され、夏強化合宿を行っている。会いに行きたいけど邪魔するわけにもいかへんし。とにかく今はスノーとのGⅢをこなし、きっちり結果を出す。

今回の函館スプリントSは秋に開催されるGⅠレース、スプリンターズステークスの前哨戦。GⅢなのでGⅠ前哨戦には申し分ない。
ちなみにだが、スノーホワイトはその名前の通り真っ白な馬体である。今年の六月頭に私と一緒に安田記念を勝利した。

「初めてやね、自分は何遍も来た事あるんやろ?」
「そうだな……夏はほぼ北海道にいるかな。で、秋になったら戻ってくる感じ」
「こいつ……………………私は函館スプリント終わったら帰るからな」
「せっかくだし、地元に一度ぐらい帰ったらどうだ? GⅠ勝ったんだし、北海道土産でも持ってさ」
「はぁ? 何言うてんねん。菊花賞終わるまで帰らへんで」
「強情だなぁ、一回くらい帰って親父さんに会ってくればいいのに」


そんなやり取りをしたのもだいぶ前。早いもんで、さっさと函館スプリントSの日になった。函館の舞台に立つのは初めてだが、スノーホワイトといえばなんたってGⅠ二勝のつわものなのだ。安田記念はあの不良馬場で内側から豪快に追い込んで勝利したわけやし、しかも今日は良馬場。晴れ。誰もがこの真っ白な馬が勝つと期待しているだろう。
私はやる気満々なスノーホワイトを撫でながら前を見据えて地下馬道を歩かせた。ロジェの時は二人引きだったが、流石に歴戦というべきか一人引きで厩務員の岩蔵さんは「……今日はなんか飛びそうなんよね」と雑談かましながら引っ張っていく。怖いわアホ。もっといいこと言うてよ。

地下馬道を出て陽光に晒されながら合図を出せばスノーホワイトはターフを駆ける。日の下で見るとほんまに白いな、と驚きながら私はスノーホワイトをゲートへ導き、スタートを待つ。ずっとそうなのだが、気分屋とはいうが存外にいう事は聞いてくれる印象だった。まあ調教の時も調子良さそうやったし、問題ないやろ。それに今回は一枠一番。スピードと瞬発力がモノを言い、すぐに決着のつくレースだ。

遠慮はいらん。押し通る。
ゲートが開いて、一気にスノーホワイトは躍り出た……が。


『スノーホワイト伸びません!! ァア__ッッ!! スノーホワイト十四着______っ!!』

……ウソやろぉ______!?」


観客は皆そう思った。私は思わず叫ぶ。ハズレ馬券が空中をビラビラ舞う。私は死んだ魚のような目でその様子を見ていた。
いや……不運っていうか……負け確騎手健在やん…………
いや今回はこのスノーのやる気の無さが私の騎乗を超えた結果やねんけどさぁ……。気分屋が過ぎんでちょっと。不安なってきた……まだこの子とは年内後二戦あんねんけど……
両方GⅠやで。片方は地方交流重賞やけど、どっちにしろGⅠやで!?

スノーホワイトは私に向かってと言うよりかは、観客に向かって「んべ~~~安田頑張ったんで今日はやる気ありませ~~ん」と舌を出していた。いや完全に観客を小馬鹿にしとる。そして地下馬道に戻って私に向かって鼻を鳴らし、実に楽しそうに私になでなでを要求したのだった。おま……。お前……

…………あの親にして、この子ありか……いや……めっちゃ納得したわ……ヤバいな……

私は嘗て三度ほど調教で乗せてもらったやべえ馬を思い出していた。
……あいつ、レースの時何遍もゲートの中で起立しよったからなほんま。スノーホワイトはそういうことせんだけまだましか……


いや、考えるのやめよ。栗東に帰ろ。