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アスナショウコ
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【創作|馬軸】春雷-極光
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【創作|馬軸】春雷 芽吹- 春の嵐
※支部からの移植版です。文面そのままです。第一話~第三話までのクラシック編。
Attention
・この作品は競走馬とそのジョッキーを中心に描いていますが、実在する団体とは何の関係もない創作作品です。
・実際の競馬に関してわからない部分は調べていますが、事実と異なる点やありえない点もあるかと思います。そこについては創作だと割り切ってお楽しみいただければ幸いです。
・実在する競走馬をモデルにした競走馬が登場します。名前がもじってある場合があります。
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隣の芦毛は、ゲートが開くまでずっと僕を睨んでいた。ヒトで言う所謂「ガン飛ばし」というアレだと思う。僕はフジサワコネクトに何かした記憶がなかった(まず厩舎も離れているはず)しあまり興味がなかったので無視して前だけを見据えた。
あと数秒もすればゲートが開き、僕は真っ先に先頭へ躍り出て逃げ切る。それだけ。
それだけ
……
なのだが。
(僕、なんかしたっけ
……
)
気が散る。作戦だろうか。フジサワコネクトが僕をガン見しているのを見た他の馬も僕をじ~~っと見始める。これがもしかして「マークされる」ってことだろうか。もし前が壁になったら窮屈だし思いっきり走れない。どうしよう__
「あか~~~~ん!! ロジェ!! 走ってやぁ~~~~!!」
(あっ。
…………
うわ______っ!! ごめん后子!!)
四馬身半出遅れた。これはまずい。いや一旦落ち着こう。后子は冷静そのものだし、特段手綱を強く握られることもない。他の馬がちらりと首を動かしてちょっと「大した事ねえな」という表情で僕を見る。加速してできる限り近づこうとすれば后子に軽く手綱を引かれた。今はまだ抑えろと指示されたので従う。出遅れたなら焦って前に行く必要はない。掛かってスタミナを浪費しては加速力が落ち、終盤で走れなくなる。
第一コーナーを超えて第二コーナーへ差し掛かる。そういえばフジサワコネクトがいなかった。いつもならこの辺の位置でレース展開をうかがっているはず。そう思って前を見ればフジサワコネクトが先頭を引っ張っている。__あの「追込の鉄骨娘」が逃げているのだ。皆がフジサワコネクトを追いかけている。
僕は后子の指示に従って大外へ退避する。馬郡が団子状態になっていて中を突っ切れないのだ__幸いスタミナは余裕だった。第二コーナーを超えて走る。大外で様子を伺いつつ僕は馬郡の隙を伺ったがまるでない。
(
……
このままじゃ最短距離で前に行けない
……
いや。待てよ? そういえばフジサワコネクトっていつもどこから飛んできた? 大外から一気に回って
……
追い込んできたはず。
…………
まさか)
后子は美しい唇をすっと横へ引いた。たとえ大外回りだろうが極限まで無駄のないコーナーリングで第二コーナーを超え向こう正面の直線を突っ走る。だがまだ抑えたまま走る。
脚は温存しておく必要がある。一気にまくって走れるように。大逃げの終盤、さらに後続を突き放すあの加速を持続させ、さらに速く走るために!
馬郡から外れて外を走るが、この位置は確かに追い込み脚のフジサワコネクトからしてみれば全ての馬の位置を把握できる最上の位置。それがこの最後方__しんがりで馬郡からは外れたこの位置なのだ。
まだ、まだ我慢。
抑えたまま第三コーナーを通過し__ここから、行く。
ぐっと脚に力を籠める。心臓がドクン、と拍動する。僕は后子が手を動かすのとほぼ同時に一気に加速しカーブを一気にまくって上がる。
____前へ。前へ、前へ進め! 誰も追いつけないその先へ!
馬郡が視界で後方に去って行く。僕は一気に前へ躍り出た。二馬身程のリードを保ったまま走っているフジサワコネクトを追走し、第四コーナーへ差し掛かる。じわじわ前に詰めて先頭を狙う。
____行ける。
僕と后子の瞳が前だけを捉えた。__誰もいない。ここから先には誰も行かせない。
白綾后子という騎手に、敗北の泥は被せない!
僕は鞭が入った瞬間に溜めていた脚で一気に走る。最終局面、最後の直線。上り坂がある。
そして、ダービーは最も運のある馬が勝つ。だがそれがどうした。だからなんだ。僕は坂路コースで上がり最速を出した。勝機はいくらでも転がっている。
運だと? 笑わせやがって。
后子は「最も運の無い騎手」と呼ばれていた。僕は「運を掴み切れない馬」だと言われた。運で勝敗が決まるなら、そんなもん僕が覆してやる!
____逃げ切る。逃げ切ってやる! 誰も僕らの前は走らせない!
そう、思った。フジサワコネクトの後脚が地面を力強く踏む。爆発的な瞬発力をバネに銀の馬体が前へ躍り出る。上がった左後脚から何か__銀色の固形物が飛んだ。僕が一瞬驚くのもつかの間、鞍上で后子は素早くそれを捉えている。手綱が突然思い切りぐっと後ろへ引かれた。
「____痛っったぁああああ!!!!」
(!? 后子!? __どうしたの!?)
「
……
ックソ!! 視界が、無い、でもっ__今ならまだ前狙える!
____走ってロジェ!! 勝つのは私らや!!」
后子が僕に右鞭を入れた。合図に僕は再加速し前を走るフジサワコネクトに並んでつける。一瞬こちらを見たコネクトの鞍上がぎょっとした表情で僕らを見た。僕の首筋になにか、生温かい液体がかかった気がした。だがそんなことを気にしている場合ではない。
差せ。もっと早く足を回せ。后子に敗北なんて文字は似合わない。もっと速く、強く!
「____誰も僕ら/私ら の前を走ることなど、罷り通るものか!!」
その決意が心拍数を上げる。僕はさらに足へ力を込めて芝を蹴り飛ばす。だが届かない。フジサワコネクトが僅かに前にいる。もう一歩、あと僅か。踏み込め、前へ行け! そう強く念じ必死で走る。
手前を変えて前へ。もう一度。右、左__だが、届かない。
もう一度。前へ、右と左を変える。だが前にいる。フジサワコネクトが絶対に前にいる。
『____鉄骨娘の根性と意地を見せるか!? 黒い紳士が優雅に勝利を収めるか!? いや
……
差し返せない!! さらに突き放すフジサワコネクト!! フジサワコネクト!! 瀬川迅一、フジサワコネクト!! 瀬川迅一、フジサワコネクトォオオオオ!!!!
____三十四年ぶりの牝馬ダービー制覇ぁああ!! フジサワコネクトだぁあああ!!!!』
銀色の馬体がゴール板を通過した。僕もほぼ同時に通過したが、確実に彼女には負けている。首か、半分か。それぐらいの差があって__その僅かな差が途方もない差に感じられた。僕は首を動かして后子の方を見る。
「白綾!! 白綾大丈夫か!? ごめん、俺のせいで__」
「気にしてへんて。そもそも走っとる間の落鉄なんかどうやって予見せえっちゅうねん。
……
めっちゃ痛いけど。
……
もうなんか
……
半分視界ないもん。帰ろ、ロジェ」
そう言った后子の顔は、真っ赤な血に塗れていた。
僕はビビり散らしながら「うん
……
」と頷いて、后子の指示に従って小走りで他馬に合流した。
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