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浦山野あずま
48925文字
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二次創作(その他)
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幸せの森のお話集
10年以上前に一年間ほど書き続けた、ハッピーツリーフレンズの二次創作集
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はじめましての話
ある日、
森の中、
クマさんに、
出会った。
フレイキーの家からいつもみんなで遊んでいる野原までの一番の近道は、森の中を突っ切って通っている小道だ。怖がりのフレイキーにとって森を通るなんてとんでもない話だけれど、今、フレイキーは森の中を歩いている。
みんなでおやつに食べようとクッキーを焼いていたら、家を出るのが遅くなった。少しぐらい遅れたからって誰も責めたりはしないけれど、フレイキーは怖がりだから他人から怒られたり嫌われたりしそうなことは絶対にしたくない。森の怖さと友達から嫌われる怖さのどっちが嫌かなんて比べてみるまでもない。だからフレイキーは森の中を早足で歩いている。
怖いところに一人でいると怖い話を思い出してしまうもので、最近聞いた色々な怖い話が一気に脳内を駆け巡る。そういえば、この森についての話も聞いた気がする。確かトゥーシーが従兄弟から聞いたと言っていた。最近森に住み着いた、血に飢えた戦争帰りの軍人クマの話。
(会っちゃったら怖いなぁ、嫌だなぁ)
絶対にその怖い軍人さんには会いませんように、とフレイキーはお祈りした。でも、この街では嫌だと思った危険そうなことは大体十割の確率で向こうから全速力で迎えにくるのだ。
なんで。
(なんで、ぼく、茂みの向こうなんてのぞいちゃったんだろう!)
フレイキーは怖がりだから、気配に敏い。
なんとなく、本当になんとなく、目に付いた茂みの向こうが気になった。
好奇心は猫も殺す、なんて難しい諺は知らないけれど、その死亡フラグになり得る好奇心にフレイキーは抗えなかった。
茂みの陰からそーっと向こうを窺うと、誰かが木にもたれ掛かって座っていた。
顔とか髪とか手とか服とかが、所々赤いなにかで汚れている。
あれは、あれだ。見たくないけどいつも結局見ることになる、あれ。
そう、血。
森の中で、血まみれの、知らない顔の、軍服を着た男の人。尻尾とか耳とかはちょっと見えにくいけど、多分クマ。これは、トゥーシーの言っていた戦争帰りの
……
?
思わず後退りかけて、茂みが大きく音を立てる。
「あ、」
目が合った。
まるで獲物を見定めるように濃い金色の目が細まる。
怖がりの本能がフレイキーに教えてくれた。
この目からは逃げられない。
なんでどうしてわからないわからないわからないどうしようこわいにげなきゃうごけないどうするのどうしたのどうなるのしんじゃうのたべられちゃうのどうしたらいいの。
いろいろがぐるぐる回って回りすぎて目も回っちゃって飛び出したのは、
「こッ
……
、こんにちは!」
よいこのごあいさつだった。
だって、一昨日、学校でランピーに言われたから。人に会ったらあいさつをしよう、って。
怒らせた?殺される?
怖くて怖くて開いているはずの目の前が真っ暗になる。
「こ、」
聞こえてきたのは、思ってもいなかった少しかすれているけど柔らかな声。
「こんにち
……
は
……
?」
そっと彼の顔を見れば、目をまんまるくして呆気にとられてポカンとしている。
フレイキーが勢いであいさつしてしまったならば、彼もつい反射で返してしまったんだろう。その顔は、何を言われたのかも分かっていなければ自分が何を行ったかも分かっていない、という顔だった。
つられてフレイキーまでポカンとしてしまって、しばらくにらめっこみたいに見つめあった(二人とも、それはそれはマヌケな顔だったろう)。
我に返ったのは、グゥともギュゥともいえない変な音が鳴したから。どうも、その軍人さんのお腹が鳴ったみたいだった。自分のお腹の音に息だけで少し笑ってから、
「ねぇ、キミ」
その人は、とてもとても穏やかにこう言った。
「早く行った方がいい。殺してしまうから」
その言い方に、フレイキーは泣きそうになった。
怖いから。
殺してしまうと言われたのがじゃなくて、その人の穏やかさがとても悲しそうで痛そうで、それが怖かったから。
フレイキーは怖がりだ。だから、他の人が怖がってるのも怯えているのも隠していても自分のことみたいに分かってしまう。
それに、こんな薄暗い森の中に血塗れでお腹を空かせたまま一人でいるのがどれだけ怖いことなのかだって、よく分かる。
フレイキーは彼にタッと駆けよって、横たわった体の横にクッキーの入った包みを置いた。置いたが早いか、また駆けて一番近くの木の陰に隠れて、顔だけ出して声を振り絞った。
「あ、あああああげる!それ!チョコチップクッキー!」
「え、」
驚いてまんまるになった目は、きれいな深緑色。
「食べていいよ」と震えたか細い声で言いながら、(この人は怖くない人かもしれない)とフレイキーは思った。
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