幸せの森のお話集

10年以上前に一年間ほど書き続けた、ハッピーツリーフレンズの二次創作集


 
あらしのひの話
 
 ノイズ雑じりのラジオの天気予報が息も絶え絶えに言うには、日が沈む頃にはこのあたり一帯は嵐になるらしい。
はいはいみんなこれ聞いたねー、とフリッピーが手を鳴らした。
「だから君たちみんな、もう家に帰りなさい」
「えー!やだー!!」
「ちょっと待ってって!このゲーム、あとちょっとでカドルスに勝てるんだからさ!」
「せめてこの章が読み終わるまではダメですか?キリが悪いんです」
「もうちょっとでクッキーが焼けるのに……
「もうちょっとでクッキーが食べれんのにー!」
思い思いに遊んでいた子供たちは一斉に不満の声を上げる。
よくもまあ他人の家でここまで自由に振る舞えるものだ(子供だから許すけど)。
これがもしどこぞの青いヒーローとかだったりしたら“彼”が即座に追い出してくれているところだろう。家からではなくこの世から。
まあ、今この場にいないKYどころかKB(空気ブレイカ)のことは置いといて。
そろそろ、わずかだが風も出てきた。雨もじきに降りだすだろう。
そうなると、
「風が強いと家の色んなところが変な音を立てるし、雨が強いと窓を打つ音が酷いし」
それらの音は、フリッピーにとってどうしようもなく良くない色々を思い出させる。
思い出して身が竦んでしまえば、それまでだ。
「確実に、絶対に、もう十中八九で俺に殺されるから」
だから、そうなる前にみんな家に帰りなさい。
なにも好き好んでこんな危ない家にいることはない。
いくらリセットされるって言ったって、死にたくはないだろう?
そう言って聞かせるけれど、でももうすぐ嵐が来るんでしょ?と逆に聞き返される。
「だって、僕達だよ、フリッピー!絶対に外に出たとたんに急に風が吹いて雨が降って雷が鳴って木が飛んできて直撃したり凄い雨で穴だらけになったり落ちてきた雷で感電したりするに決まってるよ!」
「カドルス……、朗らかにそういうことを言うのは止めなさい」
だって僕、死んだ回数なら年間MVPだもん。今更なにが怖いっていうのさ、と言うカドルスの表情には本当に何一つ屈託ない。
なにをどう言っていいか分からなくなったフリッピーに、子供たちは一斉にたたみ掛ける。
「いいじゃん、どうせもうフラグが立ってるんだからさ」
「どうしたって今日は死ぬっぽいんだから好きにさせて?ね?」
「ねえ、心配ならね、ボクがドントに電話して来てもらおうか」
ヒーローがいればフリッピーもちょっと安心だよね?そう言ってフレイキーまでもが駄々を捏ねる。
今更ながらの話だが、フリッピーは子供好きである。
子供好きというのは、突き詰めて言えば子供の無邪気なお願いごとを無碍には断れない人種を指す。
「ああもう……。なんで君たち、僕らみたいな危険人物と遊びたがるかなぁ……
お父さんとお母さんが泣くよ、とフリッピーが溜息を吐けば、子供たちはみんな明るく笑った。
「だって僕たち、フリッピーのこと好きだもん!」