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浦山野あずま
48925文字
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二次創作(その他)
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幸せの森のお話集
10年以上前に一年間ほど書き続けた、ハッピーツリーフレンズの二次創作集
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いつもと違う話(パターン3:少年と青年)
臆病者のフレイキーの目下の憧れは、なんと言っても元軍人のフリッピーである。
なんでって、それはもちろん強いからだ。
常々臆病な自分に嫌気がさしている少年にとって、すごく怖いらしい戦場で戦って帰ってきたというのは、戦争自体の勝ち負けは関係なしにとても強くて格好良いのである。強いのがいいならヒーローでもいいじゃないかとトゥーシーに言われるけど、目からビームはフレイキーの目指す方向とは何か違う。
そういう訳でフレイキーはできる限り(つまりどちらもが生きている限り)はフリッピーの近くにおり、彼を観察するようにしている。お手本はしっかり見ておかなければならない。木に、茂みに、建物の陰におっかなびっくり隠れては、フリッピーの一挙一動を観察する。隠れてと言ったところでフレイキーの赤毛は目立つし、ずっとビクビクしているから、フリッピーにしても周りのみんなにしても気付かない方がどうかしているけれど。
さて、フレイキーは今日も今日とてフリッピーの後をこっそり追い掛けていた。
フリッピーは、元気に挨拶するカドルスとギグルスとトゥーシーに手を振り返し(「あ、フレイキーだ」「またやってるの?」「今日は死ぬなよー。午後から野球の約束だろ」)、ストリートパフォーマンスを披露するマイムにコインを投げ(フレイキーもキャンディーをあげた)、かっぱらいを仕掛けてきたリフティとシフティをとっ捕まえてナイフを突き立て(ちなみにトドメは通りすがりのモールの杖だった)、公園に出ているクロ・マーモットの店でクレープを買って(はて、なんで二つも買うんだろう?)、ベンチに座った。
公園は公園らしく公園らしさをまっとうしていて見晴らしがよく、フレイキーが身を隠せる場所はベンチから1メートルぐらいしか離れていないダストボックスの陰だけだった。フレイキーがいくら小柄な方といったって、14歳の少年が隠れきるにはダストボックスでは役不足。それでも一応やってみようと変なチャレンジ精神を発揮して膝を抱えて身を縮ませてみたけれど、確実に無駄だ。
(これはさすがに駄目だって
……
)
情けないやらいっそ笑えるやらで膝に顔を埋めていると、何かが日を遮った。はて、雲が出てきたんだろうか。カミナリ雲だったりしたら撃たれて死んでしまうかもしれない。
しかしてフレイキーに落ちてきたものは、カミナリよりもよっぽどフレイキーに衝撃を与えた。
「あの、キミ」
「は、はいッ!」
急に声を掛けられたことにびっくりして、バネみたいに跳ね上がる。
つい閉じてしまっていた目を恐る恐る開けると、視界いっぱいにクレープが。
「食べますか」
更にクレープの向こうには、ほとんど遠くからしか見たことがなかったフリッピーの顔があった。
二人並んでベンチに腰掛けて、ただ黙ってクレープを食べる。
(なに、この状況!)
フレイキーはすっかり舞い上がってしまって、折角のクレープも味なんてさっぱりなままにもそもそと噛んで飲み込むだけだ。
遠くからならいくらでもジッと見つめられるけれど、こんな近くからでは真っ直ぐも見れない。
横目でチラチラと盗み見ると、視線がかち合ってしまった。
真っ赤になって固まってしまったフレイキーに、フリッピーは「あのですね、」と話し掛けた(話しかけられた!)。
「どういう遊びか知らないですけど」
呆れたのか弱ったのかそれとも怒ったのか、溜息を吐くフリッピー。
「そういう尾行みたいなことしてると、死にますよ」
ゲリラどもを思い出して、酷く気分が悪いんです。
これで少しでも変な音でも立ててみなさい。どうなるか分かるでしょう。
フリッピーは自分で言ってどうなるかという想像に嫌悪の情が湧いたのか、眉をひそめて肩を強張らせた。
「だから、それを食べたら(食べながらでもいいから)、早く俺から離れてください」
俺は気狂いのフリッピーですから。突き放したように言う。
のだけれど。
完全にのぼせ上がっているフレイキーが、そんなことに気が回る訳がない。
軍人さんが、僕に話してる!名前を教えてくれた!(名前は前から知ってるけど!)
震える体と一緒に、フレイキーの思考はぐるぐると無茶苦茶に回した遊園地のコーヒーカップみたいに撹拌されて、変な方向にすっ飛んだ。
「ボ
……
ッ、ボクの名前ッ!」
「はい?」
「フレイキーっていうんだ」
フリッピーとしては、怖がって震えているのだと思っていたのだ。だって、自分は人殺しだから。
実際のところ、フレイキーは嬉しさと緊張でいっぱいいっぱいで、ほとんど死に体で言葉を吐いた。
その結果が自分の名前なのだから、フリッピーだって呆気に取られてしまうのも仕方がない。
ポカンとしているフリッピーの顔なんて直視できないフレイキーは、精一杯捲し立て続ける。
「風変わりっていう意味。だからその、あの、ええと
……
ッ!ヒヨコとか、釘とか、色々怖いけど、でも、えっと、」
殺されるのは怖いけど、殺さない時の軍人さんは怖くないっていうか、むしろカッコイイっていうか、
「とにかく、ボク、変だから!だから、軍人さんがどんなんでも平気なんです!」
言いきった。
言いきってから、ああああ!もうボクなに言ってんの!よく分かんないよ意味分かんないよ軍人さんに呆れられてる!絶対に!とさらなるパニックに陥った。まさにパニック・スパイラル。きっと今なら頭の混乱で死ねる。
脳内で一人賑やかに大混乱中のフレイキーの耳に、小さな笑い声が届いた。
小さな、少しかすれて柔らかい笑い声。
少しだけ視線をあげると、
「本当に、変わった人ですね」
なんと、フリッピーが(遠慮がちにだけれど)笑ってくれた。
初めてすぐ傍で見た笑顔に、フレイキーの顔はボッと熱くなった。
世界はやっぱりくらくらぐらぐら混乱しているけれど、キラキラに輝いている
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