幸せの森のお話集

10年以上前に一年間ほど書き続けた、ハッピーツリーフレンズの二次創作集


 
 
くまとねむるくまの話
 
 ブザーを鳴らしてもドアを叩いても中からの返事はなかった。だから勝手知ったるなんとやら。フレイキーは遠慮も躊躇いもなく家に上がって、フリッピーを呼びながら中を探して回る。
冬のフリッピーはいつだって眠たそうで、油断するとどこでだって眠ってしまう(それは『軍人さん』も同じだそうなので、だから今、フレイキーはあんまり怖くない)。
以前に、廊下で眠ったりしたら寒いし痛いし死んでるのかとびくびくするとフレイキーがちょっと怒ったら、フリッピーは「ごめん。でも僕はクマだから仕方ないんだ」と申し訳なさげに眉を下げた。クマだからと言われてしまうと、ヤマアラシだから髪が針みたいなフレイキーはどうしようもなくなって「せめてブランケットは被ってよ」とだけお願いした。

リビング、キッチン、寝室、まさかと思いながらのバスルーム。どこを探してもフリッピーはいなかった。
留守だったのかな、とフレイキーは不安になりかける。でも今日は(今日も)遊びに行くって約束してたし。
他に探していない場所ってどこだっけ、ときょろきょろ顔を巡らせると、いつもは見ない階段はしごが天井から降りていた。屋根裏部屋だ。
そう言えば前にフリッピーが言っていた。
物置程度だし、危ないものが(本当に、死亡フラグ的な意味で本当に危ないものだから)が沢山あるから、フレイキーは絶対に近付かないように。
ああ、でも、もしフリッピーが屋根裏で眠って寒くて風邪をひいちゃったらどうしよう!風邪はしんどいよね?苦しいよね?
そう思うとフレイキーはそっちの方がすっかり怖くなってしまって、少し震えながら勇気を奮って階段はしごを音を立てないようにゆっくり上った。天井で床の扉をそぅっと持ち上げて、恐る恐る顔だけだしてのぞいてみる。
と、いた。ちょうど天窓からの光が当たる、少し暖かそうなところでフリッピーは眠っていた。
フリッピー、と名前を呼びかけて、あれっと気付いてフレイキーはそれを飲み込んだ。
眠るフリッピーに大きななにかが寄り添っている。なんだろう?
そろそろと天井で床の扉から這い出て近寄ってみると、それは多分フレイキーぐらいの大きさ(フレイキーは11歳にしてはかなり小さい)のテディベア。首のリボンはモスとオリーブのギンガムチェックで、目は綺麗な緑金色だ。くまの大きなお腹は乱暴に切り裂いたのをやっぱり乱暴に縫い合わせてあった。更に脇には大きなナイフ(ああ、これ、フリッピーのだ)と針と糸。これをどっちがどっちのつもりでどっちをしたのかフレイキーには分からない。でもどっちがどうしたのであってもフレイキーには悲しかった。

とりあえず、とフレイキーは一度階段はしごを下りてベッドルームから毛布をとってきてフリッピーにかけてあげた。それから持ってきたカバンをひっくり返して引っ張り出したのは、フレイキーが持ってる中でも一等の特大絆創膏。フレイキーは自分の針みたいな髪だって怖いぐらいだから、絆創膏だっていろんなのをたくさん持っている。この大きな絆創膏はその中のとっておきだ。それをテディベアのお腹の傷にぺタッと貼った。うん、これで大丈夫。
フレイキーはちょっとだけ満足した。
テディベアに抱き付いてみたら、ふわふわしてて気持ちよかった。
テディベアの毛並みを撫でながら、フレイキーは小さな声でクマに語った。
それは歌うみたいな調子で、まるで子守唄みたいだった。
「そろそろ起きようよ、フリッピー」
だってね、もうすぐ春が来るんだよ。そしたらね、このクマさんも一緒にね、クッキーとサンドウィッチとはちみつとパンケーキと持ってお花を摘みに行くんだ。