幸せの森のお話集

10年以上前に一年間ほど書き続けた、ハッピーツリーフレンズの二次創作集


 
ゆきにうもれてしまった話
 
 森に、この冬一番の大雪が降った。
さて、雪の重みで抜けたポップ氏の納屋の屋根の修理から、見事血の一滴も流さずにペテュニア宅へ生還する途中のハンディは、不可解なものに遭遇した。
「なにしてんだよ、お前ら……
思わずしかめっ面になったハンディの足もとに、ごろごろと転がる見慣れた顔ぶれの子供連中。
これが事切れていれば更に見飽きた光景なのだけれど、なんの奇跡か惨劇の痕跡たるどす黒い赤は見当たらない。
みんな、無傷ではあるらしい。
とりあえず一番近くにいた遠縁の頭を靴の先で軽くつつく。
「なにすんだよ、ハンディにいちゃん!」
痛いじゃん、とトゥーシーが寝転んだままで文句を言う。
「お前らなぁ、雪の中で寝るなんて、凍傷するぞ」
それか背中が凍って雪に張り付いて、起きた瞬間に後ろがベリッと剥がれるとか。
考えただけで痛いが、どちらにしても可能性は至極高い。
しかしトゥーシーは「大丈夫!マフラーもフードもバッチリ完全防備だから!」と自信満々に親指を立てる。
どこからその自信がと呆れる。
まあとにかく、だ。
「何が楽しいんだ、それ。冷たいだけだろ」
「フレイキーに聞いてよ。オレもカドルスもフレイキーが楽しそうだから真似してみただけなんだから」
「フレイキー?」
少し遠い位置で赤毛が白に映えて、実に見事なコントラストを作りだしている、村でも特に小さな子供。
「おい、フレイキー」
呼べば、細くて短い腕がひらひらと振られた。

フレイキーは全くいつもと同じようにフリッピーの家まで来たが、全然いつもと違うことに家の前でフリッピーが仰向けで寝ていた。
「フリッピー、どうしたの」
「家の前の雪掻きをしようと思ったんだけどね、眠くて力尽きちゃって……
それでそのままバッタリ。
そこから動けないんだ、と、フリッピーはやっぱりまだ眠いんだろう、いつもよりふわふわした話し方で教えてくれた。
でもそんなことしてたら軍人さんにおこられないのかな、と訊くと(だってあの人、ものすごく“カホゴ”だし)、大丈夫だとやっぱりふわふわと笑った。
「俺、寒いのが嫌いらしいから。冬は外にいると滅多なことじゃ出てこない」
確かに、戦場での冬の記憶もないしなあ。
雪にスイッチはないのかもしれない、と嬉しそうだ。
つまりはちょっと風邪をひきそうなことをしたって軍人さんに怒られないらしくて、じゃあそれなら。
フレイキーは、こてんと雪の上に寝転んだ。
「ぼくもいっしょにおひるねするー!」

以上のようにして、この状況は作られた。らしい(とにかくフレイキーも眠いらしくて夢うつつで寝言半分の説明なので、ところどころは想像で補った)。
成程。確かに発端たるフリッピーが、数メートル先で雪に埋もれて本気で寝ている。
昔から(それこそ戦争に行って何かが増えて帰ってくる前から)、妙に意味が分からないことをするヤツだ。
さて、不意にハンディは気がついた。
今ここに寝転んでいるのは、トゥーシーとカドルスとギグルスとフレイキーとフリッピー。
ピンクと赤と緑のあそこらへん、寝息が穏やか過ぎないか。
ビーバーとウサギとリスとヤマアラシとクマ。
リスと、ヤマアラシと、クマ。
「ぅおいッ!?」
思わず叫んで、ハンディは駆け出した。
とはいえ、雪で足は沈むし、バランスをとる両手はないしで、走ると言うよりは大股の早足程度だが。
走って走って着いた先は、当初から目指していた彼女の家。
扉を開けて(どうやってかは企業機密だ)、ペテュニアが「おかえりなさい」と言い終わる前にハンディは叫んだ。
「ペチュニア!ポットにココア5人分、淹れてくれ!!」
あのままじゃあ、冬眠組が寝ながら死ぬ!