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河童の皿箱
2025-04-02 09:27:13
53202文字
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遊戯王:長め
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その男は、能楽師であった。
あるグループがグループになる前、昔の話。
※捏造の濃度が高い。
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ふたりは考えに考え抜いた末、ふたりによる初めての公演の場に選んだのは、歓楽街より少しばかり住宅街に寄った位置にある公園であった。その頃にはすっかり劇場での仕事もなくなり、けれどこれは好機とばかりに、悪戦苦闘を経つつも各種の契約を整理した。その結果、自らの制作物の権利は正しく自らのみが持つと定め、公演の権利を申請。許諾され、ようやくふたりは完全に独立した演者となり、その活動を始める日が
……
そう、今日であった。
真上にだけ広がる、高い、高い、キンと冷たく澄み渡る夜空には、地上の眩しさに埋もれて、星も見えない。歌から星が消えて久しく、けれど人は夜に適応し、公園にもそれなりに人通りがあった。仕事を終えて疲れ果てた人、これから仕事とその前に走る人、仲の良いものとつるむ人。そんな往来の最中、催し物を開くにはうってつけの広い芝生の外周は、ストリートパフォーマンスのための空間として行政が提供しており、そんな場所に真っ赤な敷物を敷いて、ふたりは座っていた。
開始時刻が迫る。能楽師は静かに、能面を、小面をかける。はたり、と扇子を開いては、閉じて、また座って、風に膨らむ袖をバサリ。その後ろでは、雅楽師が鞨鼓を小さく打ち、余興とばかりに詩を吟じる。いやはや、これはなにごとか。これから一体、何が始まるのか。通りがかる人々は奇妙な出で立ちのふたりに、好奇の目を向けてはふと立ち止まったり、特段気に掛けることもなく走り去っていったり。
公園に掲げられた電光時計が20時を知らせた頃。面をかけた能楽師が何も言わずに立ち上がると、小さな人だかりは、真っ白な街灯に照らされた、纏う装束の美しさに息をのんだ。染め上げられた紅に、散りばめられたる花々が、大口袴の純白に映える。御付きのように佇む雅楽師は、肩に切れ込む狩衣の、袖よりいでし細指が、ゆるりと笛を、龍笛を拾い上げては、口につける。
ひゅうと響いた風鳴りに、足をひとつ、またひとつ踏み出す。何度も、何度も反復したその振りを、音に任せて、ゆらぁり、ゆらり。往来人が何だろうと覗き込めば、ふと、ドン、と大きく踏み鳴らされる。緩より急へ。未だ序の口であれど、ふたりは型を破り、激しく、ぐるり回って、舞い踊る。翻る衣の袖と、素早い、けれど決して乱雑ではない足運びと、それを導く笛の音と。誰もが時を忘れたまま、開いた扇子が、ハッと止まっては、また緩く動き出す。
能楽師の歌声に誘われた人々が、ついつい足を止めては、人だかりはほんのわずかに大きくなっていく。小面が月に照り、喜びの視線を観客へと送り、さらに加速する。ふと気が付けば、笛の音と歌声は、人々に耳慣れた速さにまで高まり、人々はつい、手を叩く。叩いて、叩いて、叩いては、雅楽師は拍手に足並みを合わせ、能楽師もまた、それに合わせて足を踏む。調子はどんどん舞い上がり、そして演目の終わりを迎えると、観衆は演者に、パチパチと拍手を送った。
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