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河童の皿箱
2025-04-02 09:27:13
53202文字
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遊戯王:長め
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その男は、能楽師であった。
あるグループがグループになる前、昔の話。
※捏造の濃度が高い。
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涼やかな風が吹き抜ける公園。木々の葉は色づき、赤や黄色やチラチラ散っては、傾く夕日の赤と緑の芝生を彩っていく。人の往来も暑さが引っ込むのと同時に増え始め、いよいよ迎えたこの日だと、3人は春にも陣取っていた場所に真っ赤な風呂敷を敷いた。
おっ、今日からまたやるのかい? 春にも来ていた常連が、彼らの姿を見て顔を綻ばせた。また戻ってくるからなーと、一度立ち去っていくさまを見送って、早速と3人は準備に取り掛かった。
日が地平線の彼方へと沈んでいく。夜の帷が降りてきては、地より照らす街灯たちが押しのけ押しのけと鍔迫り合い。そんな白熱をよそに、公園の往来の上に、琵琶の淡白な響きがガランと散れば、人々はふらりつられて人だかりを作り上げていく。その中心の赤の上にて、着飾った雅楽師は朗々と謡う。
さて、今日皆様にお見せ致しますのは、昔々に武勇を謳った英雄のお話。その頃は妖、物怪、様々なる悪鬼が闊歩していた時期でございます。傷ひとつ、病ひとつ、巡り巡って村を、街を滅ぼしてしまうような時代でございました。はて、床にて臥せる男。その傍らにて佇むは、一振りの刀
……
。更に琵琶の音は連なり、重なり。前に出て舞う能楽師の歌声と交わり、黒衣の操る人形と共に、物語を紡いでいく。
来る宵の暗闇に、戸がトントンと叩かれる。するり開いたその先より現れたのは、美しき衣を纏いし花魁であった。女は、臥せる男にそうっと寄り添い、男は薄目を開いて女を見る。あぁ、お前は。男と女は恋仲であった。女は男が病に臥せたと聞いて、急いでここまでやってきたのだと。男は女に添われ、あぁ、その声のなんと心地よきことか。病の苦しみも吹き飛ぶかのような夢のような時に、ただただ陶然と解けていくかのような。
ふと、女が男にずいと、抱きしめんが如く近づいた。はらり広がる黒髪と、はだけた肩の玉肌に、誰もが見惚れたその途端、男は刀をグイと手に取り、女の体を袈裟懸けに斬りつけた。お前はあやつではないな、と。
ぎゃあと上がる悲鳴。女の美しき顔が鬼の如き恐ろしい形相に変わった。その変化の早業に、観衆達がギョッと目を剥き、同時に吹き付けられる蜘蛛の糸。急いで逃げていく女を、病でありながらも男は必死に追い続けた。そうして血を辿り、辿り着いた岩屋の奥。女はとうとう、自らの正体を明かした。女は土蜘蛛の精が化けた幻であった。その異形に男は刀ひとつで立ち向かい、歌い、舞い踊り、大立ち回り。けれど病に侵された身。とうとう男が追い詰められれば、刀は男の手を離れ、ひとりでに土蜘蛛の額を貫いた。
崩れ去る大蜘蛛の身と、噴き出していく糸と。絡められた男は刀を手に急いで岩屋の外に出た。その頃には男を蝕んでいた病もすっかり消え失せ、男は刀に新たな名を与えることとした。
……
かくして、刀が得た名を、蜘蛛切というのでございました。その刀は今、どうなっているのか、ですって? いやはや。歴史の波とは恐ろしいものでございます。いつぞやにはすっかり姿を消し、行方知れず。けれど、蜘蛛を切った刀の名とその逸話は、代々より物語として受け継がれ続けてきたのでございます。
からん、と。琵琶が最後に柔く鳴れば、3人の演者は観衆へと頭を下げ、いつの間にやら取り囲まれるほどに大きくなった人だかりから、ぱちぱち、ぱちぱちと、大きな拍手が送られた。
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