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河童の皿箱
2025-04-02 09:27:13
53202文字
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遊戯王:長め
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その男は、能楽師であった。
あるグループがグループになる前、昔の話。
※捏造の濃度が高い。
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母子ともに健康。なんとも喜ばしい知らせに胸をホッと撫でおろし、数日の入院を経た後、双子を連れて家に帰る。そわそわと落ち着きなく日々を過ごしていた雅楽師が歓喜の声をあげ、出産を乗り越え母となった人形師と、寄り添い続けて父となった能楽師を、腕を大きく広げ、抱きしめて迎えた。
産まれたばかりの赤子たちを寝床の布団に転がせば、すやすや眠る姿にすっかり見惚れて、微笑ましくなるのも束の間。目まぐるしい新たな日常がやってきた。
人形師は出産で疲れ果てている中、母乳を赤子に飲ませては、時間を置くと赤子たちが泣くが故にまた飲ませ、能楽師は慣れないおしめの交換やれ、なぜか泣き叫ぶ子たちを抱きかかえてあやすやれ。そんなふたりが子たちに振り回されぐったりとし始めた頃、雅楽師もまた、ともに子育てに参加した。
かれこれしばらく経ち、双子の性格も徐々にわかってきた。上の子は中空をぼうっと眺めていることが多い。反応が鈍いわけではないが、あまり活発には動かない。けれど、問題は下の子であった。元気が有り余っていて好奇心旺盛、何にでも興味を示す。目を離しているうちにあっという間に這って別の部屋に行ってしまうし、小さな段差に転びそうになってはひやりとしたり。とにかく目を離せない子であったため、未だ体調の戻らない人形師が主に上の子の様子を見て、下の子は能楽師と雅楽師のふたりで面倒を見続けた。当然ながら、その間も能楽師と雅楽師は仕事をしていたが、互いに仕事をする時間と子守をする時間を作り、交代しながら日々のやるべきことをこなしていた。
慌ただしく日々が過ぎ、あっという間に季節が変わる頃。人形師の体調もすっかり回復して、双子たちもすくすくと育っていく。あんなに小さかった体はずっしりと重みを感じる程になり、ぐらぐらしていた首もしっかりと据わってきた。あちこちをきょろきょろ見渡しては、父を、母を、そして同居人を見つけ、にっこり笑う。そんなことも増えてきて、3人もまた、その愛らしさに笑った。
父と母で子たちを抱きかかえては、子守唄を歌う。同居人がそれに合わせて楽器を鳴らせば、子供たちはじっくりとその音に、声に、耳を傾けた。いつもぼんやりしている上の子も、あれだけ活発な下の子も、歌と音を聞くと、夢中になる。仕事や家事をしていない時、そうして過ごすようになった。すると、子供たちはふと、小さく声をあげた。その声は、父の歌声を、母の歌声を、なぞるかのよう。日に日に明瞭になっていく双子の歌声に、大人たちは耳を傾けた。
日が昇り、月が昇り、その日ごとに子供たちは大きくなっていく。座れるようになって、立つようになって。いつしか母の乳からも離れ、ものを食べるようになって。そしてとうとう、言葉を覚える頃になった。父をとと、母をかか、そう呼ぶようになったのは、どうやら雅楽師の仕業らしい。能楽師と人形師が忙しくしているとき、面倒を見ていた雅楽師が絶え間なく話を続けていたようだ。とっと、とっと、かっか、かっか。後を追うかのように、双子が父と母を呼べば、小さな腕を広げて抱っこをねだる。父が抱え上げれば、嬉しそうに笑い、母が抱き上げればすいとすり寄って眠る。
大きくなったら、どんな子になるんだろう。3人の話題は、それでもちきりであった。もし、この子たちが誰かの芸能を受け継ぎたいと言い始めたら? それはそれで、全力で教えてあげようぜ。せっかくこういう芸を持っておるんじゃ。教えた後、それをどうするかはこの子たちが決めればいいね。そんな考えも、3人は互いに交わしあう。
季節が巡る。桜が咲いて、散って、新緑が茂っては、赤や黄いろに染め上げられて、散って、眠りについては、また桜が咲く。子供たちは親に連れられて自然に目を向け、季節の巡りを覚えていく。
人々が歩いていく。人が来て、出会って、別れて、また出会って。子供たちは小さな小さな社会進出と学びを経て、知識を蓄えていく。
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