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河童の皿箱
2025-04-02 09:27:13
53202文字
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遊戯王:長め
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その男は、能楽師であった。
あるグループがグループになる前、昔の話。
※捏造の濃度が高い。
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もうひとつの現実の中、閑散とした通りに、男と少女は居た。コンテストの結果は8位。少女はふと呟いた。あーあ、もっと上まで行けると思ったんだけどなぁ。決勝戦まで行きたかったなぁ。そんな言葉に、男は肩をすくめた。まあな。でも、俺はここまで行けるなんて思ってなかったし、他の連中の手法やれなんやれ勉強できたし。それに、仕事もたっぷりもらえるようになったからな。8位もきっと、末広がりでいいことあるだろうしさ、出れてよかった。すると、少女はにししと笑った。ほんと、ストイックですねぇ、と。10人中なのだから決して高い順位ではなかったが、それでもふたりは満足していた。ここにやってきたのは、ただのひと休み。少女がどうしても少し話がしたいと駄々をこねたので、仕方がないと。
それにしても、すっごく明るくなりましたよね。少女が男の顔をのぞき込めば、男はそうか? と。少女は力強く頷く。明るくなりましたよぉ。わたしと出会った時なんて、今にも死にそうな顔してましたもん。そりゃ、わたしは人生経験とかまだまだですけど
……
皆楽しそうに遊んでいる中で、ひとりで道に座り込んで、ずぅっと死んだ目で絵を描いてるんですもん。それで、しばらく遊んで戻ってきたら、ぐったり倒れて魘されてて。バーチャルだから起こす手段もないし
……
心配になりますよ? 男は頭を掻いた。そ、そうかよ
……
。傍から見てそんなにだったのか
……
。小さくこぼせば、少女はまだまだとばかりに続けた。
フレンドになった後もそうです! 話しかけてもあーとかうーとか生返事しかしないし、具体的な話なんてこれっぽっちも
……
あ、眠れないってことだけは聞いてましたけど
……
でもでも、ちゃんと会話ができるようになったのが去年の春ごろでしたっけ? そのぐらいですし。いやー、やっぱり人間、睡眠って大事なんですね! そうして笑う少女に、男は言った。
……
なんか、話の論点がずれてる気がするぜ。いや、でも
……
うん。近頃は、ちゃんと眠れるようになったんだ。それを聞いて、また少女は笑った。
通りの先まですいすい歩く。ここにあるのは、真っ直ぐに敷かれた道と光だけだ。何の建築物もない。作られたばかりの、真っ白な世界。ところで、ここって何ですか? 少女が問いかければ、男は答えた。俺が買ったサーバーだ、と。少女は驚愕する。えっ、サーバー買ったんですか!? えっ、そんなに儲かったんです!? けれど、男は肩をすくめた。いや、サーバーっつってもピンキリだし、ここは安かったぞ。そんなに広くもないしな。男が手をかざせば、そこに壁があるかのように、ふたりはその先には進めなくなった。あっ、ほんとだ。ちっちゃいサーバーなんですね、と。
それで、ここをどうするつもりなんです? 少女が問えば、男は空を仰いだ。いや、なんかな。お前に言われて、色々作ってたら、もっと作りたくなったんだ。手が空いた時に、ここにちっさい屋敷と庭でも作ろうと思って。そんな大層なもんじゃねぇけど、また遊びに来てくれよ。ちょっとずつだけど、作っていくからさ。少女は笑った。じゃあじゃあ、また来ちゃいますからね! わたしは、あなたのファン第1号ですから! あっ、ブクマ付けとかないと。そうしてウィンドウを操る姿に、男もまた笑う。
世界の終端に、ふたりは座り込む。現実ではようやく暑さも和らいで、もうすぐ秋がやってくる。もうすぐ、もうすぐなんだ。また、大きな転機がやってくる。でも、それを乗り越えれば。
男はまっさらな世界の片隅で、少女に言った。俺に絵を描けって言ってくれて、ありがとうな、と。少女は豆鉄砲を食らったかのように目を丸くして、どうしたんですか、急に、と。男は頭を掻いて、いや、なんでも、と。そうしてまたしばらくぼうっとしていたら、今度は少女が男に言った。来年。来年も、出場しましょうね。今度はテッペン! 取りましょ! わたしは出る気マンマンですから! そうしていきり立つ姿に、男は、あぁ、とだけ応えた。
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