紫輝
2023-12-09 10:28:10
36253文字
Public リオヌヴィ
 

1000字くらい作文詰め合わせ

短いものの詰め合わせセット。書いたら増えます。(最終更新:01/10)



かさね面影


 自然光に微か光る白銀。時として周囲を呑む悠然とした空気を纏う主の、優雅にして隙のない立ち居振舞いに従うように揺れるそれ。
 その佇まいに思わずついたため息に、白銀が靡き、持ち主が振り返り――
「公爵殿におかれては、随分とこの髪に興味がお有りのようだ」
  くれないの瞳が三日月を えがいた。しまった、と思いはしたが目の前の相手に対してそう思った時点で既に負けているのだ。ならば潔く。
「不躾な視線を詫びよう。恥ずかしながら銀髪には格別な心情があってね」
「ふむ。『公爵』にため息をつかせるような銀髪となれば持ち主はさぞ麗しき方なのだろうな。銀髪の君の話、是非お聞かせ願いたいものだ」
 我らの友人との約定に従い、ここで耳にした事を利用や他言はせぬと誓おう。
 胸に手を当て礼を取れば、持ち主は――召使は愉快げにその美貌を歪める。続いた言葉は表情に似合いの完全に面白がっているそれで、どうやらこの茶番に最後まで付き合わされるらしいと察した。異邦の旅人たる少年のもとに集う者たちは皆「ここで見聞きした事をその人に不利益をもたらすために使ってはならない」と厳に言い含められているから、舞台に乗ってもまあ問題はないな、と判断はすれど、馬鹿正直にイチから付き合うには相手との友誼には不足がある。
「申し訳ないが『召使』殿を楽しませるような話題は持ち合わせがなくてね。最近逢えてない、ってだけさ。よくある話だろ?」
 小首を傾げて両手のひらを上げると、召使は小さく肩を揺らした。
「なるほど、お忙しい方のようだ。不足かもしれないが、この髪で良ければ今しばらくの間貴殿の無聊の慰めにしていただいて構わない」
 後ろ手にしゅるりと流される白銀の軌跡をうっかり(普段からの癖だ。どうしようもなかったと弁明しておく)追ってしまった己に脳内で嘆息をひとつ。それから肩を竦めた。
「申し出は有難いが気前が良すぎないか? 厚意より対価が気になるんだが」
「なに、我らが祖国のために心を砕いてくれている貴殿へのちょっとした感謝の気持ちだ」
「なるほど。で、その真意の程は?」
 にこ、と。首を傾けるようにして微笑む美女。紡がれた言の葉も相まって、彼女の肩書きを知らない普通の人間であれば舞い上がっているところだろう。(生憎)リオセスリはそう言った意味では普通の人間ではないし、美人の微笑みにはそこそこ耐性があるので――まあ殆どの場合耐性は貫通されるのだけれども――こちらも笑顔で首を傾げる。
 のに、こういった趣向はお気に召さなかったか。まあ相手が『銀髪の君』では分が悪いな、などと笑みを収めて呟いた召使は、貴殿に感謝しているのは本当だ、と続けた。あの子が世話になっている、と。
 曰く、「ここ最近、あの子の元素力の扱いに目覚ましい向上が見られる。『ペールス ゆうじん』の調子も良いようだ。貴殿の助力だろう?」。彼女があの子と呼ぶ、自分と親交のある子どもなど限られているがと浮かべた名前は果たして『あの子』を指すそれで、特徴的な瞳を細めるその表情 かおに『お父様』の貌を見る。
「俺はたいしたことはしてないさ。フレミネ君の筋がいいんだろう。まあそういうことならその提案、受けさせて頂こう。背中は任せてくれ」
「『銀髪の君』には及ぶべくもないが、美しく舞ってみせよう」
 互いにくつりと笑み交わしたところで、先行する少年が自分たちを呼ぶ声がした。


「ああ、お望みなら三つ編みにするが」
「それは謹んで遠慮させて頂くよ」

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この後「公爵殿は興味深い男だな。茶席への招待、断って損をした」って発言して「なんでそれ今(ヌ様のいるところで)言った?!」って空君と子ども達にアワアワされて欲しい(勿論分かってやってる)(それはもう楽しげに)