紫輝
2023-12-09 10:28:10
36253文字
Public リオヌヴィ
 

1000字くらい作文詰め合わせ

短いものの詰め合わせセット。書いたら増えます。(最終更新:01/10)



特等席で観劇を


 これ二人に。それぞれに差し出した封筒を各々手に取ったヌヴィレットとリオセスリがその瞳をまたたく。先に口を開いたのはリオセスリだった。
「幻想シアターとやらへの招待状だな? 前に俺が受け取ったのと少しデザインが違うが」
「前に公爵に渡したのは特別枠の招待状だったから。今回は正式なゲストとしての招待みたい」
 そこ見て、と示したのは封筒の下に並んだ元素の意匠だ。リオセスリの触れているものは氷元素のそれが、ヌヴィレットの触れているものは水元素のそれが、淡く光を放っている。
私も招待を受けたのか」
 エンボス加工に似た意匠を撫でながらヌヴィレットが呟くのに、うんと頷いた。
「今度は一緒に行けるよ」
 誰と、なんて、口にしなくても彼には分かっているだろう。紫水晶がゆっくりと隠され、覗く。
「旅人」
「うん」
「旅人」
「うん」
……感謝する」
「俺はただのメッセンジャーだけど良かったね」
 相応しい言葉が探せないとばかりに自分を呼んだヌヴィレットが漸く、噛み締めるように口にした礼に頬を掻く。幻想シアターには足を踏み入れたばかりでまだ謎だらけだ。そもそも何故招待制なのか、招待されるゲストはどうやって選別されているのか、自分は何も知らない。けれど次回の公演のための招待状を配ってほしいと子オオカミに渡されたそれを見て、足はまずここに向いていた。ひとまず任務は成功に終わったけれど、茶会の最中 さなかにヌヴィレットの瞳をちらとよぎる微か寂しげなひかりはやはり気になっていたので。
「うむ嬉しい。楽しみだ、とても」
 手にしたそれを大切そうに引き寄せてヌヴィレットが笑う。沁み入るような囁きが空気をそっと揺らして、
「かっ……わぃぃ
 頭を抱えた。今まではきちんと飲み込めていた形容詞をうっかりこぼしながら。
 十二分に理解していたつもりだったけれど、本当にリオセスリが好きなのだな、と思う。手の中の小さな幸運に控えめに喜びを表すその仕草に大切な妹が重なって見えて、彼に対して覚えるとは思ってもみなかった庇護欲が湧いてきた。公爵がいない時は自分が守ってやらなければ。いやでもそもそも公爵がいない時はこの人普通に最高審判官なんだよな――
「可愛いだろ」
 俺のひとだぞ。
 唸る自分を楽しそうに観察していたリオセスリからそれはもう得意げな美声が飛んでくる。彼が自分の心のうちをどれほど読んでいるのかは分からないが、機嫌良さげに笑っているから少なくとも発し(てしまっ)た『可愛い』が邪な気持ちから出たものではないことは正しく察してくれているのだろう。
 次は私も共にける、と華やいだ声音で口にするヌヴィレットに、俺も楽しみだよ、なんて答える瞳が暖かな日の空の色をしていることに気付いて璃月の本格的な結婚祝い(これまで見てきた物たちの中で一番数も種類も多くてとにかく豪奢だった)でも贈ってやろうかと本気で考える。鍾離先生が嬉々として手伝ってくれるだろう。彼は二人を可愛がっているから。
 心踊る意趣返しを脳内のメモ帳に書き留めたところで、もう一つヌヴィレットが喜びそうな事に思い至った。
「ヌヴィレット」
「なんだろうか」
「今回はフリーナ 監督と、シャルロット カメラマンと、看護師長 エフェクトのプロ壁炉の家の姉弟 演出のプロも一緒だからさ、公爵のかっこいい写真たくさん撮ろうね!」
 言葉を咀嚼してぱあと顔を輝かせるヌヴィレットと前触れなくハードルを上げるのはやめてくれないかと悲鳴を上げるリオセスリにひとまず反撃はできたと笑う自分に呼応するように、アイスティーに浮かんだ氷がカランと鳴いた。

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事情話したら嬉々として全力で協力してくれそうな面子しかいなくて包囲網がすぎるなって思いました。頑張れ公爵。