紫輝
2023-12-09 10:28:10
36253文字
Public リオヌヴィ
 

1000字くらい作文詰め合わせ

短いものの詰め合わせセット。書いたら増えます。(最終更新:01/10)



気遣い様がお待ちです


 いつからだろう、「よく来たな、息災だったか」と。微笑んで迎えてくれるヌヴィレットさんが、ほんの一瞬、背後に目をやるようになったのは。
 彼曰く『野暮用』にたっぷりの時間を使って、普段からは考えられないくらいひっそりと――気配すら消そうとしているくらいに――入ってくる公爵を見て、そのお顔をほころばせるようになったのは。
 リオセスリ殿、と公爵を呼ぶ声が弾んでいるのを聞くたびに嬉しくなってしまう。
 ゆっくり話はできたかい、と迷子の気遣いを見せては君を待っていた、と答えられるのに虚を突かれたような顔をする学ばない公爵も、ウチたちに向けるのとは違う意味でやわらかくてあまい表情を公爵に向けるヌヴィレットさんも、どちらも本当に可愛くて、何度見ても見飽きない。
 大切な あるじ様に心を預けられる存在ができたこと。
 それがずっと見守ってきた可愛い弟分であったことを、心から嬉しく思う。
 偶然が重なり合って織り上がったこの織物を、きっと運命と呼ぶのだろう。
 二人には笑っていて欲しい。それはウチだけじゃなく、メリュジーヌみんなの願いだ。
「いつもごめんなさい、ヌヴィレットさん。公爵、もうちょっとで戻ってくると思うのよ。用事は先に済ませなさいって何度も言っているのだけど」
「私は気にしていない。リオセスリ殿は忙しいのだから」
 さし当たって、いい加減この気遣い迷子をなんとかしよう。今日はそう思ってここに来た。気にしていないと言いながら、その綺麗な瞳にちいさな寂しさを浮かべて微笑むこの方を見ているのはやっぱり辛い。ウチが言って響かないなら、この方に動いてもらうしかないのだ。
「あのね、ヌヴィレットさん」
「なんだろうか」
「ウチ思うの。ヌヴィレットさんが一言言ってくれたら、公爵もスケジュール変更を考えてくれるんじゃないかしらって」
「一言とは?」
「もっとゆっくり話がしたいから、用事は後回しにして欲しい、とか」
 公爵がヌヴィレットさんに弱いのは昔からだけれど、番ってから さいきんは輪を掛けて弱くなった(そうでなくっちゃ)。そもそも公爵が必要もない『野暮用』を作って中座しているのは突き詰めなくてもヌヴィレットさんのためなのだから、この方にお願いされたらきっと首を縦に振らざるを得ないはず。確信をもってした提案に、ヌヴィレットさんはむうと唸って。
「リオセスリ殿の職務を妨げるのは本意ではない。ただシグウィンが言うのなら変更のきく部分なのだろう。が、その「重く」は、ないだろうか」
「ないわ! 大丈夫なのよ!」
 ちらと覗かせた不安を、自信たっぷりに否定する。公爵に限ってそれだけはあり得ない。愛しさの過剰分泌でフリーズするくらいだろう。少しばかりつきすぎてしまった勢いに驚いたように瞬いたヌヴィレットさんがなおも見せる躊躇いに、自らの胸に手を添えた。
「ウチが手を握っていましょうか。それでヌヴィレットさんを力づけられるなら」
「ああ、それはいいな。是非頼む」
「お安い御用なのよ!」
 ヌヴィレットさんの隣へ移動して、すらりとした手をしっかりと握る。笑顔を交わしたところで、扉の向こうに待ち望んだ気配を感じた。


 折角シグウィンと共に訪れてくれた君が『用事』に取られてしまうのは些か寂しい。君が多忙であることは重々承知の上ではあるのだが、どうか一度、その『用事』の処理順に関して考えてみてはくれないだろうか――ウチの手を握って、公爵を真っ直ぐに見つめて、少しだけ震えた声で、一生懸命に紡がれたヌヴィレットさんの『お願い』を聞いた公爵の顔は今までに見たことのないくらい可愛いもので、写真機を持っていなかったのが残念でならなかった。

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彼女きっとヌ様から思ったより可愛い動作と台詞が出てきて心中拍手喝采してる。看護師長っょぃ