紫輝
2023-12-09 10:28:10
36253文字
Public リオヌヴィ
 

1000字くらい作文詰め合わせ

短いものの詰め合わせセット。書いたら増えます。(最終更新:01/10)



龍王様の愛がめちゃくちゃあったかい件


「君のために誂えたのだ」
 人間の身体は気温が変化する季節の変わり目に調子を崩しやすいと聞く。最近寒くなってきたので――目の前でそれはもう得意げに、ヌヴィレットがほわほわと笑っている。たっぷりとした袖を指先で摘まんで軽く両腕を広げた、稲妻の伝統装束確か、そう、『フリソデ』なるものの、袖のデザインを観客に魅せるときのようなポーズでもって。
 その衣服は起毛素材でできているようだった。ゆったりとしたサイズのガウンだ。裾は足首近くまであった。紺と白と青でまとめられた爽やかな色合いはヌヴィレットを思わせる。全体は紺色、裾の部分は彼の頭を飾る二筋のような青で、やや波打ったデザインになっているのがなんとも可愛らしい。大きめのボタンで留めることを想定されているのだろう前身頃の、襟元にあたるボタンだけが彼の法服を想起させるクラバットに似た意匠になっているのがお洒落いや、こちらもどうにも可愛らしく見える。ついでに「なかのひと」も世界で一番――少なくともリオセスリにとっては――可愛らしいので、目の前で可愛いが大渋滞を起こしている。結果として。
 デザインはヌヴィレットが考えたのだろうか。『最高審判官』の役を脱いでいる時の彼がその手で形作るものは、素朴で穏やかな雰囲気を纏った可愛らしいものが多い。これもそうだと言われれば納得のいくデザインではあるな、なんて考えつつリオセスリは首を傾げる。一番大事なことをまだ聞いていないので。
「よく似合ってるよ。ヌヴィレットさんは何でも着こなすな。ところで俺のためってのは?」
「先に言ったとおりだ。寒くなってきたのでな。この服であれば、就寝時に君の懐炉代わりになれるかと思う」
 良質な睡眠に就寝環境の温度は深く関わっていると聞いたのでな――勉強したのだとでも言いたげな笑みで言い切られ、心臓が柄にもなく未来の淑女向けロマンス小説のような音を立てるのが聞こえた。俺のひと、可愛いが過ぎる。
「そりゃあまた。世界一高級な懐炉だな」
「判断材料が不足している。世界一高級かどうかの断定は難しいな」
 フードもあるのだぞ、と追加の仕様を説明してくれながらほらと被って見せてくれたその部分は白で、ご丁寧にも向かって右側――『最高審判官』のヌヴィレットの髪飾りがある部分だ――にそれに似た可愛らしい飾りまでついていた。妙なところに拘りを見せるところが実にヌヴィレットらしくて愛おしい。髪を編んで前に垂らしていたのはフードのプレゼンのためだったようだ。
「フードがある事で保温効果が上がるそうだ」
 どうだと言わんばかりの笑顔に無事陥落(はなから踏み止まる気もなかったけれども)して、ぽやぽや笑っている可愛いひとに回した腕が生地にやんわりと受け止められる。ヌヴィレットの狙い通りきちんと保温効果を発揮しているのか、その身体は常よりも熱を持っていた。
「本当だ、あったかい」
「なによりだ。是非活用して欲しい。君専用だ」
「心もあったまる殺し文句をありがとう。早速温もりを分けてもらおうかな」
「うむ。任せてくれ」
 精一杯努めさせていただく、と、花を飛ばしつつ大真面目にうなずいてくれるある種器用なヌヴィレットに唇を寄せて、共にベッドへ潜り込む。
 私の方が良質な睡眠を得た気がする、君の役に立っただろうか、なんて方向音痴を発揮してしょげてしまった可愛すぎるひとを、如何に昨晩の睡眠が良質だったか詳細にカスタマーレビューして茹で上げるのは明朝の話だ。

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寒ければ寒いほどいつでも来たまえのテンションで懐炉になる支度してるんだろうなと思うと無限に愛おしいですよね