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camellia57
2025-12-13 19:47:56
38479文字
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降っても晴れても 君の隣で(川玉SSまとめ 26.5.18更新)
川瀬エンド後の川玉小話まとめ
下に行くほど新しいです
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「タマちゃん。今日は何にするんだい?」
帝大からの帰り道、商店街の近くを通りかかったときに聞こえてきた言葉。もしかして、と声の方を見やれば籠を持った玉森くんが魚屋のおやじとなにやら話をしているところだった。隣の八百屋のおばさんにも「タマちゃん、おまけしとくよ」なんて声を掛けられている。菊坂通りには夕飯の買い出しに来た人たちが行き交っているのによく声が通る人たちだ。
タマちゃんと呼ばれていることには正直驚いた。
ほとんど毎日ここで買い物をしているわけだから顔見知りくらいにはなっていてもおかしくないけど、玉森くんは人付き合いが得意なわけじゃない。それが愛称で呼ばれて馴染んでいるなんて。
買い出しを終えた玉森くんが俺に気がついて、周りをきょろきょろと見回した後、ゆっくりと近づいてくる。俺は誰に見られたっていいんだけど。
「今帰りか? 今日は早いんだな」
「急に講義が休みになったからね。タマちゃんは?」
わざとそう呼ぶと「聞こえていたのか」と気まずそうな顔をする。
「お、お前の話はしていないし、私たちの関係についても話してないぞ。お前は有名人だからな
……
」
玉森くんはいつもより声を抑えて話しかけてくる。俺は知らない相手の視線なんて気にならないけど玉森くんは違うんだろう。笑顔なのは俺だけで玉森くんの表情は硬い。
池田邸に二人で住んでいるのはこの辺りでは知られていることだと思う。友人だと玉森くんは言い張る。一緒に暮らしているだけなら友人で通るだろう。でも毎晩同じベッドで寝ているとなれば別だ。それを話したら困るのは俺じゃなくて玉森くんじゃないかな。そんな二人を友人だなんて誰が信じるだろう。
それでも玉森くんは外では『友人』としておかしくない距離を保とうとする。
最近の俺は『探偵』として新聞に載ることが度々あるから余計に気にしているのかもしれない。
またおかしな事件に巻き込まれるかもしれないし、その時のことを考えれば玉森くんが周囲と良好な関係を築いているのはいいことだと思う。
そう思うけど傍にいるのに余所余所しい態度を取られるのは面白くないな。
ごく一部を除けば俺の中では『玉森くん』と『玉森くん以外』に分類されて、後者なんてどうでもいい。玉森くんもそうなって欲しいとは思わないけど。
「前に店先で献立に迷っていたら、おやじさんが「今日はこの魚が活きがいいよ」とおすすめしてくれてな。その日は焼き魚にしたのだか確かにうまくてそこから話すようになった。八百屋のおばさんも私の知らない料理のレシピを教えてくれて、たまにおまけしてくれるのだ。今日は蜜柑を貰ったぞ。食べるだろう?」
聞いてもいないけど『タマちゃん』の理由の一部始終を玉森くんが教えてくれた。
俺は玉森くんの困った顔が一番好きだけど、玉森くんの笑った顔は可愛いから餌付けしたくなる気持ちもわからなくはない。
「君が剥いて食べさせてくれるなら」
「!!」
「駄目なの?」
「そ、そうではないが、こ、こんなところでそういうことを言うな
……
!」
「誰も聞いてないし、おかしな会話でもないでしょ」
そうやって大袈裟に反応するからついからかいたくなる。
口を尖らせて黙ってしまった玉森くん。本当に可愛い。
早く家に帰って二人きりになりたい。
◇◆◇
玉森くんが居間のテーブルに籠を置いたのを確認して、腰を抱いて引き寄せると腕の中でびくりと身体が跳ねた。
「か、か、か、かわせ!? ど、ど、どうした!?」
驚きすぎでしょ。
顎に指を掛けて顔を上向かせる。そのまま口付ければぎゅっと俺の制服を掴んできた。
舌で唇を撫でると大人しく口を開いてくれたのでそのまま差し込み、絡みとるように味わった。
角度を変えて何度も繰り返していると玉森くんの身体から力が抜けていくから、崩れ落ちないように抱き締めた。キスだけでこんな風になるなんて本当になんて可愛いんだろう。
「そんなに気持ちよかったの?」
ソンナコトハナイ、って返ってくると思ったのに目を蕩けさせた玉森くんが小さく頷いて「
……
もっと
……
」と強請った。
何も考えられなくなるってこういうことなのかと、俺はまた一つ理解した。
◇◆◇
制服を着た俺にキスされて、あの時のことを思い出したのだと風呂の中で教えてくれた。
後ろから玉森くんを抱き締めながら「じゃあ今度は玉森くんが書生服を着て、しようか?」と囁くと「着ない!」と怒られてしまった。
「それは残念だよ」なんて口で言いながら、どうやったら着てもらえるかなって考え始めてる。
もっと別のことに頭を使った方がいいんだけど玉森くんが絡むと俺は少し馬鹿になっちゃうみたいだ。
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