camellia57
2025-12-13 19:47:56
38479文字
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降っても晴れても 君の隣で(川玉SSまとめ 26.5.18更新)

川瀬エンド後の川玉小話まとめ
下に行くほど新しいです
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 きっかけは些細なことだったと思う。
 玉森くんに強く当たってしまって、玉森くんが言われっぱなしでいるはずもなくて、打たれた分だけ返してきたから俺も止まらなくなった。言い過ぎたって自覚はあったのに。いつもだったらお互いに受け流せるようなことだったのに。

 だからつい、昔のことを持ち出してしまった。

「どうせ俺に興味なんてなかったものね、玉森くんは、」
 そんな卑屈な言い方をすれば玉森くんの表情がわかりやすく変わる。
「!」
「へぇ、心当たりあるんだ? やっぱりね。俺が何を考えてるかも、何が好きなのかも……、玉森くんはずっと知らなかったもんね?」
 18年も一緒にいたって、何も知ってくれなかった。
 俺の言葉の裏なんて考えたこともなかったんだろう。
…………
 傷つけたくてわざとそんな言い方をすれば、玉森くんは本当に傷ついた顔をして俯いた。
 怒った顔も困った顔も泣き顔も、俺の言葉でころころと変わる玉森くんの表情を見ているのが好きだけど、ねぇ、下を向かれたらわからないよ。
 俺が口を開くより前に玉森くんが小さな声でつぶやいた。
「どうして……、」
「どうして、川瀬は過去の私ばかりを見るのだ? 今、目の前にいる私のことは見てくれないのか?」
 弱々しい声だった。
「玉森くん、」
「私は、他の誰でもなくて、お前の手を取ったのだ。その私のことは、信じてくれないのか?」
 顔を上げた玉森くんが俺を見る。青い目の、玉森くん。

 どうしてなんだろう。どうして……
 正直な君の言葉を信じられないんだろう。

……夢を、見ているみたいなんだよ」
「夢?」
「君に、伝えるつもりなんてなかった。それなのに気持ちが通じて……、それで十分だと思っていたのに。君が……、あんなことしたのに、」
 綺麗な君が、こんな俺を、好きだなんて、
 そんなことが俺の人生で起こるはずがない。
 ずっと、ろくなことがなかったのだから。
 言葉にできずに玉森くんから視線を逸らすと、両手で頬を掴まれた。
 心が落ち着く、玉森くんの温度。
 相変わらずお前の身体は冷たいな、と玉森くんが微笑む。
「川瀬、私はお前のことが好きだぞ。……どうしたら、信じてくれるのだ?」
 揺れる瞳で俺をじっと見つめてくる。
 玉森くんも、不安、だったのかな。
 過去に囚われて、『別の君』が見せた未来の光景に気を取られて、繰り返した先にある今をちゃんと生きていなかったのかもしれない。
 玉森くんと一緒に暮らして、毎晩一緒に寝ているなんて枝分かれした別の世界の俺たちはきっと信じないだろう。脅迫していると思われるかもしれない。
 俺にとって、それくらいあり得ないんだ。
 だからこれが現実だと何度でも信じさせてほしい。
「もう一度、言って。好きだって、」
 にゃは、と笑って玉森くんが俺の目元を拭う。
「好きだぞ」
「うん、俺も、玉森くんが、大好きだよ……
 俺の好きな色の服を着て同じ花の香りがする玉森くんにそっと触れて、腕の中の熱を確かめるように抱き締めた。