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camellia57
2025-12-13 19:47:56
38479文字
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降っても晴れても 君の隣で(川玉SSまとめ 26.5.18更新)
川瀬エンド後の川玉小話まとめ
下に行くほど新しいです
リンク先R18はパス限
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今、目の前の机にノートが置かれている。
玉森くんの少し癖のある字で表紙に大きく『決シテ、見ルベカラズ』と書かれたそれ。こんなことを書けば俺がどうするかなんてわかりそうなものだけど。これで本当に俺が見ないと思ってるのかな。逆にこれは
……
罠、だろうか? 俺がどう反応するかを試しているとか? 玉森くんは夕飯の買い出しに出掛けていて、商店街の人とまた話しこんでいるだろうからしばらくは戻ってこない。周りを確認しても蛙男の気配はしないから見張らせているわけでもないようだ。
中身を想像してみる。
勉強用のノートだったらよかったけど、その可能性はないだろう。玉森くんに日記をつけるような習慣はないはずだからそれもない。「書けたぞ!」って言いながら懲りずに持ってきては俺に破られるくだらない小説の案でも綴っているのかな。でも玉森くんは直感型だからその線も薄いと思う。
……
こういうときに俺はいい方向には考えられない。
見るなと書かれていれば反対にそれを見たくなるのは人間の心理として当たり前の事だ。
そう結論づけて俺はそのノートを手に取った。
見つかったらきっと怒るだろうな、と玉森くんの反応を想像して。
微かに震える指で表紙を捲ると日付が書かれていた。玉森くんがここで暮らすようになって間もないときのそれ。なにが書かれているのかと読み進める。
『台所を使わせてもらってはじめて川瀬に手料理を振る舞った。ポークカツレツを美味しいと残さず食べてくれた。嬉しいものだな。次は魚料理を作ろうと思う。池田邸の立派な台所を使わないのは勿体ないからな!』
…………
。
忘れるわけはない。どれくらい振りかわからないくらい久しぶりに食べた手料理の温かさ。いい匂いがするなと思って台所で見た玉森くんの後ろ姿。俺の分もあると言われて、それがどれだけ嬉しいことだったか玉森くんはきっと知らない。知らなくていい。
玉森くんが俺のために作ってくれたそれは本当に美味しかった。生きるために仕方なく、義務感で口に入れていたものとは違って、心まで満たされた。
この日から朝も一緒に食べるようになったんだ。
『ムニエルをはじめて作ったが悪くはなさそうだった。川瀬は肉より魚の方が好きなのかもしれない。しかし川瀬にはもっと栄養が必要だ。また肉料理も作ろう』
『火加減が難しくて少し焦がしてしまった。川瀬には焦げが少ない方を食べてもらった。失敗に私が落ち込んでいたせいか何も言わずに食べてくれた』
『コロッケが爆発した
……
。成形に問題があったのかそれとも温度か
……
。これは食べに行かなくてはな。川瀬に頼んでみよう』
『私の作るオムレツライスが気に入っているようだ。いつもより食が進んでた。私もオムレツライスには自信がある!』
『今日も川瀬が美味しいと言ってくれた。ほとんど作り終えてしまったからそろそろ新しい本を探してこないといけないな』
その後も毎日、毎日、作った料理と俺の反応が記録されている。
こんなに気にしながら俺のことを見てくれてたなんて知らなかった。
玉森くんは梅鉢堂から持ってきたレシピ本を見ながら新しい料理に挑戦して、たまに手を加えては成功と失敗を繰り返してた。どちらにしても楽しそうだった。
『お前が好きなものを増やしたいと思う』
玉森くんから言われた言葉を思い出す。
俺が好きなのは玉森くんで、帝都に溢れている美味しいと言われるものじゃなくて、玉森くんが作るご飯が好きで。それだけで満たされているのに。玉森くんの料理の引き出しが増えると俺の好きなものも増える。そのこと、ちゃんと伝わってるのかな。
昨日の日付が記された最後のページまで読み終わって、元の場所に戻そうとしたところで玉森くんの「あぁっ!!」と言う叫び声が聞こえた。集中していて、帰ってきたことに気がつかなかった。
「おかえり、玉森くん」
「ただいま。ではなくてだな! 川瀬! お、おま、お前! そ、それ、それを読んだのか!! 見ルベカラズと書いてあっただろう!? お、おい、ど、どこまで、読んだのだ!!」
真っ赤な顔で真っ直ぐ俺のところに向かってきて素早くノートを取り上げる。
開いていた場所から俺が最後まで読んだことがわかってますます顔が赤くなる。
そんな顔で涙目で見上げてきてもかわいいだけなんだけど。今キスしたら怒るかな。誤魔化されてくれないかな。
「別に見られて困ることが書いてあったわけでもないでしょ?」
「私が困るのだ!」
「どうして?」
「ど、どうしてって
……
。は、恥ずかしいだろう。お前のこと、こんなに
……
、」
ぎゅっとノートを抱き締めて、拗ねた顔をする。
「好きだってばれちゃうから?」
「!!」
そうなんだ。どうしようかな。頬が緩んでしまいそうになる。
でも今はこれ以上からかうのは止めておこう。
「今日のご飯も楽しみだよ」
「そ、そうか
……
おとなしく、待ってろ」
床に置きっぱなしになっていた籠を掴んで、台所に向かおうとする玉森くん。
せっかくならたまには素直に伝えてみようか。
「俺は玉森くんのオムレツライスが好きだよ」
「! そうか! やはりな! そうだと思っていたぞ!」
「また作ってくれる?」
「お前が望むならいつでも作るぞ!」
嬉しそうに笑う玉森くん。
今日からはもう少し感想を伝えてみようかな。
そうしたらまた俺の好きなものが増えていくんだろう。
一番大事なものはこの先もずっとずっと変わらないけれど。
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