河童の皿箱
2026-07-12 21:11:40
54481文字
Public
 

多分投稿してなかった文章まとめ(遊戯王)

文章データをひっくり返していたら出てきたものを纏めた。多分古い順。


(クロスオーバー)

 行燈灯る祭道。やいのやいのと人は往き、祭りだ祭りだ、あちこち賑わう。
 行き交う人の間を、男がひとり、歩いて行く。出店のお面が睨みを利かすその前に、ぴちぴち跳ねるは水飛沫。
 男はふと足を止める。1回千円高級コイキング掬い。どうだいお客さん。客寄せが男に振り向いて、ぽいとポイを投げわたしゃ、男も金を投げ渡す。
 男は水槽にしゃがみ込み、スイスイ泳ぐ魚をじぃっと、じっと、息を潜める。客寄せの言う通り、早々お目にかかれない模様の魚が沢山泳いでいた。赤い鱗、青い鱗、斑の鱗に、金の鱗。さぁて、活きが良いのはどいつかな。色とりどりの行き交う様に、人と提灯がふっと重って。あぁ、こいつが良いだろう。男は光る鱗に目星をつけた。
 男が袖を捲れば、ガッチリ鍛えられた腕によりをかけて、狙った獲物へ、すいとポイを滑り込ませれば、あぁ、なんと容易く。客寄せは目を丸くした。男は折れたポイを投げ捨て、さぁ、すくったぜ。連れて帰って良いんだろ、と。
 客寄せは歯噛みしながらも、しかしこれも商売と、男にボールを手渡せば、男はすくった魚にボールをパチリ。ゆらゆら揺れて、捕まえた。
 それじゃあな。男はまた、祭りの賑わいに足を向け、姿を消した。



 ざぶんと水に飛び込む音が屋根に反射し、籠って返る。飛び込んだ男を、魚は歓迎するかのようにスイスイ泳いで周りを回り、男が手を伸ばせば、魚は吸い込まれるかのように腕の中に入った。
 男がブラシで魚を磨くと、魚の鱗はさらに白く輝く。鰭にかけられた石飾りも磨けばピカピカに。手入れを終えたら、パックリ開けっぱなしの口に、ころりとおやつがひとつ。魚がぴょんと跳ねれば、ザバンと水が跳ね、男は、あぁ、びしょ濡れだ、と笑った。
 そうして遊んでいる間にも、他の客が男と魚に目をやれば、あれ、白銀のコイキングとは珍しい。しかもよく手入れされていて、艶が良い、と。
 男はひとつ閃いた。なあ、コンテストに出てみないか。魚はあいも変わらず口をぽっかり開けるだけ。男は笑う。今度、ちょいと見学しに行こうぜ。



 ぱっと光が舞台に投げかけられれば、そこには華やかに着飾ったポケモンと、そのトレーナーたちがズラリ、並んでいる。
 エントリーナンバーが読み上げられる中、男は観客席からじっと見守り続ける。
 審査が始まる。初めにビジュアルを、次にダンスを、最後にはわざを。審査終了後に、審査員から順位が告げられ、それぞれの参加者は喜ぶなり、肩を落とすなり。観客たちが捌けていく中、男も観客席を離れた。
 会場には、ポケモンをより魅力的にアピールするための手解きが書かれた本を売っていた。男はひとつ、本を買う。
 ポケモンに飾る装飾品が煌めいていた。何かに合うものはあるだろうか、男が目を通すが、いやはや、白銀に綿は似合わない。鉱物、いつもつけている石の装飾品で十分だ。ううむ。悩んだ果て、男は一旦、購入を見送った。代わりに、流行り物好きの能楽師に、ひとつ手土産を買って。
 あとは何かあるだろうか。男は本をペラリとめくる。食べ物にこだわると良い、ポケモン専用のおやつがある。きのみを使ったそのおやつは、ポケモンの魅力を磨いてくれる。なるほど。頷いた男は、それを作れる場所へと向かった。



 魚はケーキのようなおやつをパクパク食べる。相変わらずの無愛想だが、男にはどこか嬉しそうに見え、男もまた、俄に喜びが胸に広がる。
 ふと、魚を話している池のそこに目をやると、キラリ光るなにかがある。手を伸ばして拾ってみると、それは生え変わった魚の白銀の鱗であった。
 あぁ、そうだ。良いこと考えた。男は池からざぱりと上がり、体をしっかり拭いたあと、いくつかの染料と筆を持ってきた。魚が池から顔を出し、男の様子をじっと眺めていると、男は筆と色を操り、あっという間に白銀の鱗は虹色の鱗に姿を変えた。
 これなら似合うんじゃねぇか。男は魚に、たった今作ったばかりの鱗飾りを当ててみる。うん、なかなか似合ってる。
 さて、じゃあたくさん集めないとな。もっと色々食べに行ってみるか。男は魚をポンポン撫でた。